Bella Notte
「あ、あの、初めまして。桜井君。私は海咲中学の沢口(さわぐち)亜希(あき)といいます。実は1年前からずっと好きで。良かったら付き合ってください」

 目の前の沢口さんは凄く赤い顔をしながら、上目遣いでオレを見てくる。

 まただ。
 オレは全然この子の事を知らない。

 なのに、告白するなんてすごく勇気のいる事だろう。

 そこは本当に尊敬する。
 だけれど。

「ありがとう。わざわざここまで来てくれて。だけれど、ごめんね。オレ、今は誰とも付き合う気はないんだ。」

 そう言って丁寧に頭を下げる。

「あの、じゃあ、お友達に———-」

 ニッコリ笑い、線引きをする。

「ごめんね」

 正直、ここで関わると後々大変になるのは目に見えている。
 これまでも何度そんな目にあったことか。

 適当に答えるのは、もう辞めた。
 とりあえず、仕事中だからと謝ってその場を後にした。



 ――――「さっきの女の子、告白かな」

 みんなすごいな。
 好きな人に告白なんて、とても勇気のいる事だ。

 私は勇気が出なくて、井川君に気持ちを伝えることができなかった。
 多分この先も伝える事はないと思う。

 さっきまで桜井が座ってたイスに座り、窓辺に両手を添えて、その上に顔を乗せる。
 秋の乾いた少し冷たいとてもいい風が頬を掠めていく。

 風が髪を梳いて少しくすぐったい。

< 58 / 198 >

この作品をシェア

pagetop