Bella Notte
 ――――「ガーデンにて幸せを祈るバルーンリリースを行います。皆さまどうぞガーデンへ」

 2人の中座中に披露宴の司会のアナウンスが聞こえてくる。
 さっき桜井と少し変な雰囲気になってしまったので、このタイミングで動けるのは正直ありがたい。

 ヤツは他の友人と話してるし、側を離れるなら今だ。

 係の人がガーデンへと続くアーチ型の大きな掃き出し窓の側で、沢山の風船を手に招待客へと手渡している。

 色とりどりの風船。

「すみません。この綺麗なブルー貰えますか?」

 そう声をかければ、笑顔で手渡される。

 飛ばしてしまわないようにしっかりと握りしめ、ガーデンの芝生を横切り大きな金木犀の木の近くにあるソファへと座る。

 金木犀の香りを胸いっぱい吸い込んでも、さっきより切なさは薄れてる。過去にさよなら出来たようで少しホッとする。

 それにしても青くて綺麗な空。
 先程の飛行機雲はすでに空へと散ってしまったらしい。

「……2人に、お似合いの空だなぁ」

 中座中に流れてきたプロフィール映像で、井川君は隣町の消防レスキュー隊として活躍している事。
 増田さんとは1度友人に戻ってから、社会人になって再会、再び愛を育んできた事。

 2人の思い出が沢山詰まった感動の映像だった。

 本当に嬉しくて、おめでとう。の言葉しか思い浮かばない。

「それでは拍手でお迎えください」

 音楽と共にお色直しした2人が外階段を降りて入場してきた。

 途端に歓声が上がって、ガーデン中に幸せな光景が溢れる。
 増田さんはイメージピッタリの可愛らしいピンクのドレス。

 その隣の井川君は———ー制服着てる。

「それでは、皆様祈りを込めて、3カウントでリリースを……」

 皆が、2人へ注目している中、男性が数人こちらへ向かってくる。
 たしか、井川君の職場の方々だったような。

 会釈をしながら、私の方へ。

 体格が良く爽やかで長身の男性達にあっと言う間に囲まれる。

 結構な威圧感を感じながら、座ったままでは失礼だと気づき立ち上がりかける。

「どうぞそのままで」

 にこやかに座るように促される。

「井川のご友人の方ですか?」

 爽やかで涼しげな切長の目元が印象的な男性が隣に座りながら話しかけてくる。

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