Bella Notte
 人の気も知らないで。

 オレの中の自分勝手な気持ちが顔を出し始める。

 自分の気持ちを告白する勇気もないくせに楓の気持ちが欲しいなんて都合が良すぎる。
 わかってるんだ。ただの我儘だと。

 さっきの子を少しも気にしてない楓が憎らしくなって、少し強めにデコピンしてやる。

「痛い」

 って涙目になりながら、抗議する姿がまた可愛い。
 思い切り笑ってしまう。

「悪魔め」

 何て悪態をつきながらも最後には笑ってくれる楓が本当に好きだ。

 
 ――――「ガーデンにて幸せを祈るバルーンリリースを行います。皆さまどうぞガーデンへ」

 2人の中座中に披露宴の司会のアナウンスが聞こえてくる。
 さっき桜井と少し変な雰囲気になってしまったので、このタイミングで動けるのは正直ありがたい。

 ヤツは他の友人と話してるし、側を離れるなら今だ。

 係の人がガーデンへと続くアーチ型の大きな掃き出し窓の側で、沢山の風船を手に招待客へと手渡している。

 色とりどりの風船。

「すみません。この綺麗なブルー貰えますか?」

 そう声をかければ、笑顔で手渡される。

 飛ばしてしまわないようにしっかりと握りしめ、ガーデンの芝生を横切り大きな金木犀の木の近くにあるソファへと座る。

 金木犀の香りを胸いっぱい吸い込んでも、さっきより切なさは薄れてる。過去にさよなら出来たようで少しホッとする。

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