Bella Notte
 あぁ、学生以来、久しぶりにあの日の夢を見たのだと天井を見つめてため息をつく。

 元カレの裏切りと相まって、気分は落ち込み気味だ。

 日はもう、とっくに沈んだらしく、天窓からは瞑色の空に輝く星がのぞいている。
 あの頃から辛い事、悲しい事が重なると決まって見るようになった夢。

 父と母が亡くなった事は、寂しい時もあるけれど今では、仕方なかったのだと思える事が多い。

『幸せだって思えるまで、ずっと側に』

 そうだ思い出してみれば、桜井はあの日あの夜確かに約束してくれた。
 その約束通り、いつも側にいてくれた気が……する。

 イジワルなのに優しくて。寂しいって泣いてる時は何故かいつもすぐに気づいて、ただ側にいてくれた。

 それなのに今はいつまでも側にはいられないって……。
 それだけの時間、私に付き合ってくれたのだと今さら気づく。

 それほどまでに当たり前の様にいた存在。

「もう、愛想尽かされちゃったのかな」

 辺りを見回すけれど、人の気配が全くない事に気づいた。
 ふと、和室の座卓の上にメモを見つける。

 フラフラと立ち上がって、そのメモに目を通した。

『桜井が、後で迎えにきてくれるって。二次会会場で会おう』

 文乃……なんで……。
 今、桜井に会っても何話していいか分からない。
 でも、今桜井に側にいて欲しい。
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