Bella Notte
 もしかして、ずっと前から桜井はそうではなかったのだろうか。
 私への気持ちが、いつからか恋愛感情へ変わったのだとしたら。

 今までの数々の彼の言動は、全く違う意味を持ってくる。

 あまりの衝撃に戸惑い、何も言えなくなっていると、桜井は優しく抱きしめてきた。

「ごめん、いきなり。ゆっくりと考えてくれないか」

 今までそんな素振りを見せないようにしてたから戸惑うよな、と呟きながら。
 そんな余裕のない表情は初めて見て。

 それなのに、こんな時でさえ私の事を思いやってくれる桜井は、きっととても優しくて、強い。

 いつだってその優しさに助けられていたのに、やっと気づくなんて。

「桜井、ごめんね」
 
 自然とそう、応えていて。
 桜井の表情がこわばる。
 色々と言葉が抜け落ちてしまって、その言葉しか伝えられずに。

「すごく混乱していて、今は、本当に……」
 
 そう伝えると、こわばった表情が優しく微笑んでくれて。
 優しく額にキスを1つ落とされた。

「分かった」
 
 そう言って少し困ったような表情で頷いてくれ、身体を私の上からどかせてくれた。

「でも、ちゃんと考えるから」

 ふとベッドサイドのテーブルかスマホのアラームが鳴る。
 そう言えば飛行機の便を振替したのだと思い出し。
 画面を見なくても、とっくに出発していなければ間に合わない時間だと気付いた。

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