ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

第5話

 その日、私はバイトが終わったあと、駅に向かって歩いていた。
 早く家に帰ってお風呂に入りたい。
 そんなことを考えながら歩いていると、ふと思い出した。

 ──夜の九時

 その日はお気に入りの作家の新刊が発売日だった。
 楽しみにしていた続編で、どうしても今日中に手に入れたかった。
 家の近くの本屋はもう閉まっているけど、あそこの本屋なら夜10時まで開いてるから、少し遠いけど、行ってみよう。
 疲れていたけれど、その本を読みたい気持ちが勝った。
 きっと読み始めたら、先生のことなんて忘れられるはず。

 本屋に着いて、目当てのコーナーに向かった。
 平日の夜だからか、店内は静かだった。
 数人の客がパラパラといるだけで、BGMだけが小さく流れている。

 小説を手に取った瞬間——

 背筋がゾクッとした。
 背後に、誰かの強い視線を感じる。

「水島サン」

 その声。

 まさか、そんなはずは——

 恐る恐る振り返る。

 ——夏雄先生だった。
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