ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

哀れ

 私は全力で逃げた。
 何も考えずに、ただ走った。
 急いで駅に飛び込み、電車に飛び乗った。

 心臓が壊れそうなくらい脈を打ち、
 全身から汗が噴き出していた。

 怖い。
 もう、二度と会いたくない。
 なんでこんな目に遭うの?
 先生はどうして、あんなことを平気で言ってくるの?

 頭がおかしくなりそうだった。

 その時——

 スマホに着信があった。
 表示された名前は、夏雄先生。

「財布ってこれ?」

 写真付きのメッセージだった。
 私はすぐに返せず、画面を見たまま固まった。
 全身が震えていた。

 財布が先生の手にあるなら、悪用されることはないと思う。
 けど……キャッシュカードも入ってるし、お金が引き出せない。
 数日なら耐えられるかもしれないけど……。

 なんで——

 なんで逃げようとしてるのに、こうして逃げ場を塞がれていくんだろう。

 朦朧とした頭で、必死に答えを探す。

 ……平日の日中に学校に取りに行こう。
 その時間なら他の先生や生徒もいる。
 職員室で受け取って、すぐ帰る。

 ——そう決めた。
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