疎まれ令嬢の一途な政略婚

伊千夜(いちよ)さんは、スマホがなくて不便を感じたりはしないんですか?」
「それは、えっと……そうですね、時々は」

 普段でも使用するのは職場や家族に連絡するくらいなのだけど、スマホを【持ってない】という設定なのでそう答えた。もしも持ってない理由を聞かれたら、どう返事をするのが良いかと悩んでいると……

「その、もしも迷惑でなければなのですが。俺が伊千夜さんに、スマホをお渡しするのは駄目でしょうか?」
「ええっ、それは困ります! そんな事を瀬戸口(せとぐち)さんにしてもらうなんて、絶対に出来ません」

 もちろん申し訳ないというのもあるけれど、本当はスマホを持っているのだから。それにもしもそんな事を兄が知ったら、後でどんな叱責を受けるか分からない。
 どうにか断ろうとするが、思ったよりも瀬戸口さんが食い下がってきて。

「使わなくなった物を解約し忘れていたので、それも新品ではないのですが。次に会う時のためにも、やはり直接連絡を出来た方が良いと思うので」

 兄の浩晴(ひろはる)を通して約束を取り付けるのは手間だし不自然だと、そう言われてるようで困ってしまう。でも瀬戸口さんの言う通り、私もこの人と兄を介さないで連絡とりたい気持ちはある。
 兄の決めた事や言葉は『絶対』だけど、私自身はそれに従う事を望んでいる訳じゃないから。

「一度、俺のマンションに寄って取ってきましょうか? ここからならば、そう遠くはないですし」

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