傷だらけのシンデレラ 〜再会した元恋人は溢れる愛を押さえきれない〜
「なにか言われてましたが、ドア開けましょうか?」

「いえ、出してください…!」


急いで運転手さんに告げ、わたしは黙って下を向く。

後部座席から見えるサイドミラーには、タクシーを見届け続ける名取くんの姿が映っていた。


もしかして、名取くんに気づかれた…?

でもどうか、人違いだったと思ってほしい。


なぜなら、ヤミ金業者に絡まれて片方の靴までなくした哀れな女がわたしだなんて知られたくもない。


ただ、そうであってほしいと願うほど、胸の奥のざわめきは大きくなる。


わたしはおもむろに首元のネックレスにそっと手を伸ばした。

小さな星のトップが揺れるシルバーのこのネックレスは、当時名取くんから誕生日プレゼントにもらったもの。


別れてから8年たっても、今もこうしてこの大事なネックレスをつけている。

名取くんと付き合っていた日々は夢だったのではと思うこともあるけれど、このネックレスがわたしたちが想い合っていた唯一の証だから。


もうすぐ、うちのアパートに着く。

それでもまだこのうるさい胸の鼓動が治まらないのは、日本にはいないと思っていた元カレとばったり再会して驚いたから?


…違う。

暗がりでも顔を一瞬見たとたんすぐに気づいてしまうくらい、わたしは今でも名取くんのことが好きだと再確認してしまったからだ。
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