傷だらけのシンデレラ 〜再会した元恋人は溢れる愛を押さえきれない〜
すると、名取くんは掛け布団をめくってベッドをやさしく叩いた。


「おいで、澪」


なにも聞かずにわたしを迎え入れてくれる名取くんの柔らかい微笑みと低く落ち着く声に、わたしは目に涙が滲んだ。

こくんと頷くと、遠慮がちに名取くんの隣の空いているスペースに体を滑り込ませた。


キングサイズのベッドは、わたしが横に入っても十分なゆとりがあった。


「もしかして、雷の音で眠れなかった?」

「そうだけど…。どうしてわかったの?」

「澪、苦手だっただろ?それくらい覚えてるよ」


そんな些細なことを今でも覚えていてくれたことがうれしい。


「あと1時間もすれば雨雲も過ぎるみたいだから、それまでここで話でもする?」

「名取くんは平気なの?明日も仕事なのに」

「心配ないよ。午後から出社だから」


名取くんがそう言ってくれたから、わたしは雨脚が弱まるまで名取くんの部屋にいさせてもらうことにした。


結婚してからは目まぐるしい日々だったから、時間を気にせずゆっくり話す時間はあまりなかったかもしれない。

わたしたちは、自然と過去を振り返っていた。


学校の裏庭に住み着いていた黒猫の話や、放課後によく行った隣町の喫茶店の話。
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