13年後に再会した幼馴染と愛され生活始めます。
 そのまま街を散歩する。
 途中、気になった店に入ってみたり、カフェで休憩をしたりして午後のひと時を楽しんだ。
「こんなに有意義な時間を過ごすのは久しぶりです」
「仕事を辞めればもっと人生楽しめると思うが」
「そう……ですよね。私も賢吾も、今の仕事を辞めようって話し合いました。どうせ苦労するならやりたい仕事に就きたいですもんね」
「美澪のやりたいことって?」
「調理関係の仕事に就きたくて、専門学校に通ったんです。母は料理が苦手なんですけど祖母が得意な人で。私は祖母の味で育ちました。いつかは自分の作った料理で誰かを喜ばせたいって思っていたんです。なのに、いつの間にか忘れていました」
「思い出せて良かったじゃないか」
「はい!」
 この時、美澪は心から笑えた。
 その笑顔を見て、海堂が目を瞠った。風で靡いた美澪の髪を掬って耳に掛ける。

「その方が美澪らしい」と呟いた。

 海堂の車に戻ると予約してあるという店に向かう。
 きっと美澪では手の届かないようなお店なのだろうと身構えたが、意外にも気取らずにいられそうなオシャレな和風モダンな居酒屋で安心した。
 考えてみれば畏まった店にニットのワンピースでは入店できない。そんな所なのであれば、さっきのブティックでもっと違う服を選んだに違いない。
 カウンター席以外が全て個室になっている、内装に拘った店内はあちこち写真を撮りたくなるほど素敵だった。
 オシャレな背景に、より海堂は映える。
 映画の一場面を生で見ていると言っても過言ではない。
 客席に向かって前を歩いている海堂の背中を見詰めてしまう。
 今、振り向かれると完全に恋に落ちてしまう気がして、どうかこっちを見ないでと願うのに必死だった。
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