13年後に再会した幼馴染と愛され生活始めます。
 けれど海堂はドアの前で美澪を振り返った。
「どうぞ」
 案内する店員と共にエスコートする所作がなんとも自然で慣れている。
 ここで二人きりなんて……急に緊張してしまった。
「あ、はい……ありがとうございます」
 ぎこちない口調でお辞儀をして先に入室する。
 店内に設けられた箱庭を眺める形で席が設けられている。つまりは海堂と隣合って座ると言うことだ。

 さっきまでも隣に立っていたが、これは距離が近すぎる。
 今日のたった半日で海堂の印象がガラリと変わりつつある美澪は、これ以上海堂との距離を詰めたくなかった。
 恋愛に溺れる年齢ではないと自制心が働いてしまう。

 なのに美澪の考えなど知りもしない海堂は隣に座ると、メニューを広げて美澪に寄り掛かった。
「ドリンクは何がいい?」
 肩が触れる。その部分だけが熱を持つ。
 美澪だけが意識しているのは承知の上だが、勝手にドキドキする自分の心の鎮め方を知らない。
「あの……おすすめで……」
「アルコールは平気?」
「久しぶりだから、少しだけなら……」
「折角だから乾杯しよう」

 海堂はアルコール度数の低いカクテルと、ソフトドリンクも一緒に注文してくれた。
「ここのオーナーと仲がいいんだ。食事はお勧めで頼んである」
「そうなんですね。楽しみです」
 食事が楽しみなのは本心だ。
 オーナーは何店舗が飲食店を持つやり手なのだと教えてくれた。年齢も美澪たちと然程変わらないと言う。
 社畜の美澪とは全く別の世界にいる人たちに、内心少し落ち込んだ。
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