13年後に再会した幼馴染と愛され生活始めます。
 瞼を冷やしながら、再びウトウトとしていた。
 さり気なく流れているカフェのような音楽と、コーヒーが落ちる音。陽の光を全て奪ったように温かいダイニング……。
 これからここで過ごすのかと思っただけで、生活の質がこれまでとは比べ物にならないほど上がると予感させる。
 
 人生、何が起きるか分からないなんてしみじみと考えてしまう。
 結婚、出産だって、美澪は自分が想像していたよりも随分早くに経験した。
 この先に幸せになる気配など微塵もなかった。

 けれども神様は『再会』というプレゼントを贈ってくれた。
 忙しい日々の中で森下蒼士という大切な存在を忘れてしまっていたことを恥じた。

 蒼士は救急車で運ばれた美澪がただ眠っているだけだと報告を受け、心底安堵したと言う。そして、真っ青な顔色を見てここまで働かせた上司や同僚に憤りを覚えた。
 美澪が目を覚ました時に冷たかったのは、美澪に怒っているのではなくて会社への怒りを抑えようとしたあまり素っ気ない態度になってしまったらしい。
 その後も態度が変わらなかったのは、いつまで経っても美澪が蒼士だと気付いてくれなかったからだそうだ。

(そういえば、子供の頃も良く拗ねていたっけ)
 少しずつ、昔の思い出が蘇る。
 蒼士は美澪が自分との約束に他の友達を勝手に入れたりすると、拗ねて「僕はもういいよ」なんて帰ってしまったこともあったっけ。
 美澪の家でご飯を食べている時に、美澪が蒼士の分の唐揚げを食べてしまった時も目にいっぱいの涙を溜めて怒るのを我慢していた。
 
 蒼士がそんなだから、美澪は弟ができたみたいで世話を焼きたくて仕方ながなかった。蒼士も美澪から世話をされるのを望んでいるようだったから、需要と供給がしっかりと成り立っていた。
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