13年後に再会した幼馴染と愛され生活始めます。
 蒼士よりも一足先に二十九歳になった。
 自分の誕生日を喜んでくれる人がいるというだけで、幸せを感じる。
 きっと蒼士と一緒なら、何もしなくたって笑っていられる気がする。

 誕生日だから片付けは全部俺がやると言って、美澪に家事を手伝わせなかった。
 
 仕事を探すならここで家政婦になればいいと言っていた割に、蒼士の方がもてなすのが好きだ。
 食事の後のコーヒーを淹れるのも決まって彼がしてくれる。

 それだけじゃない。
 風呂上がりに髪を乾かそうとすると、隣からドライヤーを取り上げ「美澪は適当に乾かして終わるからダメだ」と言って丁寧に乾かしてくれる。
 ヘアオイルもスキンケアも蒼士のオススメだ。
 沢山歩いた日にはマッサージまでしてくれる。
「蒼ちゃんの方が仕事で疲れてるでしょ」何度か言ったことがあるが、決まって「美澪の手入れをしてる時間が俺の癒しだから」と返ってくる。

 病院で見る蒼士とは全くの別人だろうと美澪は思った。
 この姿を綾瀬が見れば驚きのあまり叫ぶかもしれない。

 キッチンで片付けをしている蒼士を眺めながら、そんなことを考えていた。
 
 そして三ヶ月違いの蒼士の誕生日までに、料理教室でより料理の腕を磨こうと意気込んだ。
 自分だって喜ばせてあげたい。
 まだ時間はあると思っていても、きっと瞬く間に時間は過ぎていく。
 明日、早速メニューを考えよう。

 美澪の隣に戻ってきた蒼士が水で冷たくなった手を頬に当てる。
「冷たい」
「期待通りのいい反応だ」
 満足そうに蒼士が笑う。そして両手で頬を挟んだままキスをした。

「入籍に向けて、動き出すから」
 二人の道のりはまだまだ続く。
 抱きしめられた腕の中で、美澪は頷いた。
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