13年後に再会した幼馴染と愛され生活始めます。
 そんな美澪を、海堂は更に強く抱き寄せた。
「あの……離してください」
「君は何にそんなに怯えている。どうして、怖いと感じている環境に自ら戻ろうとしているんだ」
「仕事だから、仕方ありません」
「そうやって、自分の人生を諦めているようにしか思えない」
 海堂の胸に抱かれたまま、むしゃくしゃした。きっとなんでも思い通りに生きてきたであろう、この人に、自分の何が分かるのかと言い返したくて堪らない。
「離してください」
「ダメだ。ベッドから落ちたいのか」
「先生って、いろんな患者にこんなことしてるんですか!?」
「……君だけだって言ったら?」
「え……?」
 思わず顔を見上げてしまい、視線がピッタリと重なった。
 海堂は変わらず無表情のような気がしたが、真剣に美澪を見詰めている。

「どういう……」
 嫌われているんじゃないのか。
 態度と言葉に差がありすぎて頭が追いつかない。
 それとも美澪を揶揄って楽しんでいるのだろうか。それもこの男にはあり得ない気がする。
 少しの冗談さえ通じなさそうな人である。
 じゃあ……その、言葉の意味は……。
 沈黙が流れ、見詰めているだけの時間が流れていく。海堂の心は僅か程も読み取れなかった。
 何故か切なさを眉宇に寄せている。

 しかし次の海堂の言葉に、美澪は更に混乱する事態に陥った。
「美澪はまだ気付いてないんだな」
「私が? 何かしましたか?」
「俺は、直ぐに気付いたのに」
「え、待って……海堂せんせ……」
 訊きかけたところにドアがノックされ、綾瀬が入ってきてしまった。

 海堂はサッと立ち上がると「気付かない君が悪い」とポツリと言って退室した。
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