13年後に再会した幼馴染と愛され生活始めます。
 それにしても、海堂は以前から美澪を知っていたような言葉を零した。
 流石の美澪でも、芸能人と言われると信じてしまいそうなほどのイケメンである海堂と一度でも面識があったなら覚えていたはずだ。悔しいけれど、早々あのレベルの男性と出会えるもんじゃない。
 じゃあ、一体……。誰かと勘違いもしていなさそうなので美澪は混乱してしまったのだった。

「微熱がありますね。目も虚ですし。体にしんどいところはありませんか?」
 綾瀬の声掛けに我に返る。
「え、いや、大丈夫……ごめんなさい。気が抜けて、ぼんやりしちゃって」
「ブラック企業なんですよね。そりゃ突然、寝てばかりの生活になればそうもなりますよ。せっかく入院しているんですから、遠慮なくダラダラしてください」
「あはは。綾瀬さんって面白いね」
 綾瀬のおかげで、少し方の力抜けた。

 それでも一人になると海堂のことばかり考えてしまう。
 暇つぶしができるものが何もないのもいけない。顔だけ窓の外を向けても、焦点は合っていない。さっきの憂いた海堂の顔が忘れられなかった。
 人の顔と名前を覚えるのは苦手でも得意でもないが、忘れてしまうほど沢山の人と関わってきていない。
 なのにどれだけ考えても、美澪の過去に海堂は存在していなかった。
「海堂先生は、なんで私を知ってるんだろう……」
 唸りながら伸びをする。
 ずっと横になっていてもいけない気がして、院内を散歩でもしようと立ち上がる。しかしスリッパがなかった。あるのは会社で履いていたパンプスだけだ。
 病院で貸し出してくれたブルーのパジャマにパンプスは流石に恥ずかしい。

 困り果ててベッドに座ると、ドアがノックされ、「失礼します」と男性の声がした。
「はい?」
 誰だろうと、カーテンを開ける。そこには会社の同僚である田崎賢吾だった。
< 9 / 58 >

この作品をシェア

pagetop