色褪せて、着色して。Ⅵ~黒薔薇編~

あるじの護衛

 祖国に居た頃、私は元婚約者から悪役令嬢扱いされた。
 ふと、あの頃のことを思い出す。
 あの人たちは、私を悪者にしたけど。
 私は自分が間違っているだなんて、1mmも思っていない。
 今でも、あの人たちのことは憎たらしいし、夢に出てきてほしくもない。

 自分が綺麗な人間だなんて思っていない。
 けど、
 やっぱり、自分が悪い人間に見られるのは嫌。
「ちぃーっす」
 翌日の午後。
 やって来たのはナオミだ。
 エース様曰く、ナオミとハガネはあんまり仲が良くないそうで。
 2人が一緒に過ごさないように、一日おきに来てもらっている。
 13時から17時までの4時間。
 ナオミたちは家で過ごす。

 昼食後のお茶を飲んでいた私は、慌てて口元を隠した。
「スズメパイセンとトペニ先輩はどこですか?」
 180cm近くあるナオミはキラキラと輝いた目でこっちを見ている。
 トペニとスズメは、すっかりとナオミとハガネを手なずけたようだ。
「スズメとトペニはお休みをとったわ」
「お休み?」
 きょとんとしたナオミの顔を見て。
 思わず「かわいい」と言いそうになってしまった。
「そう。当分、2人とも休み」
「……」
 みるみるとナオミの顔が曇っていく。
 あんまり感情が表情に出にくい子だなとは思っているけど。
 会ううちに、少しずつ顔の表情の変化がわかるようになった。
「ちょっと、忘れ物したんで戻るっす」
 そう言うと、ナオミはすぐに出て行ってしまった。

 トペニ達がいないと、やっぱり問題なのかなあと思っていると。
「おい、説明しろ。さわるな」
 とハガネの大声が聞こえてきた。
 ドアが乱暴に開くと。
 ナオミとハガネが入ってきた。
「スズメパイセンとトペニ先輩が留守の間、俺達が護衛をするっす」
「え?」
「あ!? なんだそれ、俺。初耳だぞ」
 ナオミの説明に、ハガネが怒鳴った。
 ナオミは涼しい顔をして、こっちを見てくる。
「え、勝手に決めちゃっていいの?」
 不安になって尋ねるけど、
「先生には許可取ったっす」
「おい、ナオミ! 全然、意味がわかんねえんだけど」
「さっき言った通りだ。俺とお前で護衛をする」
「はあ?」
 顔を真っ赤にするハガネにナオミは無視を決め込んだ。

「24時間体勢であるじの護衛をします」
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