色褪せて、着色して。Ⅵ~黒薔薇編~
「どくみ・・・」
 とんでもない言葉を理解すると同時に。
「バニラが毒なんて入れるわけないでしょうが!!」
 と口から零れ出た。
「うふふふ。毒は入っていませんが、何事も経験が大事ですわ。どうぞ、お座りになって」
 とバニラは怒る気配を見せず、笑顔で言った。
「俺、腹壊したことねえから大丈夫だぜ」
「そうだな。拾い食いして生活してたもんな」
 ハガネの言葉に対して。
 ナオミが冷たく言い放った。
 拾い食い…という言葉に、胸がちくりと痛む。
「さすがに今は拾い食いしてねえぞ!」
 と言って。飛び込むようにハガネが座った。
「ナオミ様もどうぞ」
 バニラに言われてナオミも座った。

「見たことのねえ料理ばっかだ。あるじの国の料理なのか?」
 目をきらきらさせて言うハガネの質問に。
 私は肯定も否定も出来なかった。
 身バレは怖い。
 ナオミはすぐに「あるじを困らせる質問するんじゃねえ」と言い放つ。

「いただきます」

 私が料理に口をつけたのを見計らって。
 ハガネが勢いよくローストビーフを口に入れた。
「うんめー!! 初めて食べるけど。うんめー」
「喋るか食べるかどっちかにしろ!」
 つかさず、ナオミが突っ込む。
「沢山作りましたので、沢山食べてくださいね」
「バニラさんは料理の天才だな」
 さらりと言ったハガネの言葉に。
 バニラは「まあ」と言って顔を赤らめた。
 珍しい。バニラが照れるだなんて。

 ハガネは勢いよくがっついているけど。
 ナオミは丁寧にゆっくりと料理を食べている。
 その所作を見るからに、いいところの坊ちゃんなのかなと思ってしまう。
「エアー様はこちらを」
 いつもはベールを外して食べているけど。
 今日はベールをつけたまま食べなきゃいけないので。
 バニラが気を利かせて、料理を細かく切ってくれた。
「ありがとう」

 料理をがっついていたハガネが私のほうを見る。
「あるじは、いちいち大変なんだなあ~」
「まあ…仕方ないよ」
 はは…と笑って料理を口にする。
「あの、ハガネ様。ご参考程度にお聞きしたいのですが。騎士の方は普段何を召し上がっているのですか?」
 バニラの質問に。
「ふははふとふははは」と聞き取れない声でハガネが言った。
 口に食べ物を突っ込みすぎた。
「こんな手の込んだ料理は食ってないっす」
 代わりにナオミが答える。
「茹でた野菜と茹でた鶏肉。あと茹で卵とモソモソパン」
「モソモソパンって何!?」
 ハガネのよくわからない説明に思わず突っ込んでしまう。
「まあ…。茹でただけのお料理」
 モソモソパンには突っ込まず、バニラは驚いている。
「食えるだけ最高じゃん」
 と言い切ったハガネに。
 私は心の中で泣いたのだった。
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