色褪せて、着色して。Ⅵ~黒薔薇編~
 初対面は本当に最悪だったけど。
 ハガネとナオミは面白い。
 カイ君たちと同年代だというのに。
 違う環境で生活しているせいか、全然違う生き物に感じる。

「あるじ、寝ないのか?」

 ピアノに夢中になって。
 ハガネの大声に、「わあ!」と驚いてしまった。
 そうだ、今夜は早めに寝ようと思っていたのに。
「うん。そうだね。ごめん」
 思わず謝ってしまう。
 この国のピアニストたちから借りた楽譜は一度見れば弾けるようにはなれるけど。
 何度も弾きこなす必要はあるわけで…

「なあ、あるじはどうしてピアノを弾くんだ?」

 片づけを始めた私に、ハガネが真面目な顔で質問してきた。
「どうしてって…決まってるから」
「決まってる? 王族だからか?」
 そんなの魔力無しのスペックがピアノだからだよ…
 と言うわけにも言わず。
 一度、黙り込む。
「私には、ピアノしかないの。もう、寝るね」
「そっかあ。あるじ、苦しいんだな」

 ピタッ…と自分の手が止まった。
「苦しい?」
「だって、ピアノしか選べねえってことだろ?」

 目を見開いて。
 ベール越しにハガネを見上げる。
 こいつは、何も考えていない能天気男だけど。
 時折、能天気がゆえに鋭いところを突っ込んでくるのではないかと
 恐怖を感じた。

 そそくさと部屋を出ると。
 玄関の前では、ナオミが立った状態で目を閉じている。
「ハガネ、ナオミ。交代で休憩しなよ。おやすみ」

 バタバタと音を立てて。
 2階へと上がった。

 苦しい…
 自分の部屋に入ると。
 ハガネの言葉が何度もリピートされる。
 はじめて、言われた。
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