完璧美人の私が恋したのは、眼鏡オタクのSEでした
 優希は、
 すぐにログの解析に取りかかった。

 時刻。
 接続元。
 アクセス権限の推移。

 画面に流れる情報を、
 一つひとつ拾い上げていく。
 (……このIP)

 指が止まった。

 「……総務部?」

 嫌な予感が、
 一気に背中を駆け上がる。
 (やっぱり、入口は内部だ)

 さらに深く追う。
 外部から直接侵入された形跡はない。

 一度、
 “中に作られた穴”を使って、
 外と繋がれた痕跡。
 (バックドア、高度だな……)

 しかも、
 痕跡を極力残さない手口。

 素人のいたずらではない。
 明らかに、
 “慣れている”人間の仕事だった。

 だが——
 優希は、
 小さく息を吐く。
 (……間に合ったかも)

 侵入は検知できている。
 データの抜き取りも、
 本格化する前。
 処理が早かったおかげで、
 ダメージはほとんど出ていない。

 「……最小限で済んだ」

 独り言のように呟く。
 対策は打てる。
 ログも残っている。
 数日あれば、
 完全に塞げる見込みだった。
 (不幸中の幸い、か)

 だが、問題はそれだけでは。
 優希は、
 総務部のフロアを思い浮かべる。
 (総務部のPCの、どれか一台が
  “裏口”になったのは、確実)

 偶然とは考えにくい。
 USB。
 私用データ。
 昼休み。
 頭の中で、
 点が、静かにつながっていく。
 (……狙われたかも)

 しかも、
 相手は相当、手慣れている。
 (これは、
  単なるシステムトラブルじゃない)

 優希は、
 モニターを見つめたまま、
 静かに決意した。

 「……全部、洗い出す」

 総務部。
 使用端末。
 外部媒体。

 ——誰が、
 ——いつ、
 ——何を、
 持ち込んだのか。

 ここから先は、
 “事故”ではなく、
 “事件”だった。
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