完璧美人の私が恋したのは、眼鏡オタクのSEでした
今回の一件は、
社外には一切、出されなかった。
公式な説明は、
「サーバー機器の故障」
「一部PCのシステム不具合」
それ以上でも、それ以下でもない。
結果として、三条繊維工業は、
数日間の全社休業に入った。
業務停止。
出社禁止。
システム復旧優先。
総務部のフロアでは、
並んでいたPCが、
すべて撤去された。
——全台、交換。
必要なデータは、
社内SE立ち会いのもと、
慎重に移行される。
ログ確認。
ファイル精査。
外部データの洗い出し。
「大丈夫なものだけ」
「一つずつ」
作業は、異様なほど丁寧だった。
会社の中では、
すでに噂が走っていた。
「総務部のPC、
全部替えたらしいよ」
「サーバー止まったのも、
総務が原因なんじゃない?」
休業前の、給湯室。
先輩社員が、コーヒーを注ぎながら、
冗談めかして言った。
「神崎が、
また変な操作したからさ」
「今度は、
会社のPC、全部壊れたんだろ?」
「えー、まさかー」
里桜は、笑って受け流した。
「私、そんなことしませんよ」
冗談。
軽口。
誰も、本気じゃない。
……そう、
思おうとした。(大げさだなぁ)
そう自分に言い聞かせて、
カップを手に取ったとき。
「……気にしなくていいですよ」
振り向くと、遥斗がいた。
周りには聞こえないくらいの声で、
里桜だけに向けて、そっと言う。
「神崎さんのせいじゃないって、
僕は解ってますから」
視線は合わせない。
あくまで、何気ない一言。
「冗談、ちょっとキツイですよね」
その言い方が、不思議と、
胸にすっと入ってきた。
(……遥斗)
大げさでもない。
正義感を振りかざすでもない。
ただ、隣に立って、
静かに味方でいる。
(すこしは、頼りになるな)
里桜は、
小さく息を吐いて、
コーヒーを一口飲んだ。
「ありがとう。大丈夫です」
そう返すと、
遥斗は軽く頷いただけで、
それ以上、何も言わなかった。
その距離感が、
心地よくて――
でも、
それ以上、気にすることもなく、
笑い声の中に戻る。
社外には一切、出されなかった。
公式な説明は、
「サーバー機器の故障」
「一部PCのシステム不具合」
それ以上でも、それ以下でもない。
結果として、三条繊維工業は、
数日間の全社休業に入った。
業務停止。
出社禁止。
システム復旧優先。
総務部のフロアでは、
並んでいたPCが、
すべて撤去された。
——全台、交換。
必要なデータは、
社内SE立ち会いのもと、
慎重に移行される。
ログ確認。
ファイル精査。
外部データの洗い出し。
「大丈夫なものだけ」
「一つずつ」
作業は、異様なほど丁寧だった。
会社の中では、
すでに噂が走っていた。
「総務部のPC、
全部替えたらしいよ」
「サーバー止まったのも、
総務が原因なんじゃない?」
休業前の、給湯室。
先輩社員が、コーヒーを注ぎながら、
冗談めかして言った。
「神崎が、
また変な操作したからさ」
「今度は、
会社のPC、全部壊れたんだろ?」
「えー、まさかー」
里桜は、笑って受け流した。
「私、そんなことしませんよ」
冗談。
軽口。
誰も、本気じゃない。
……そう、
思おうとした。(大げさだなぁ)
そう自分に言い聞かせて、
カップを手に取ったとき。
「……気にしなくていいですよ」
振り向くと、遥斗がいた。
周りには聞こえないくらいの声で、
里桜だけに向けて、そっと言う。
「神崎さんのせいじゃないって、
僕は解ってますから」
視線は合わせない。
あくまで、何気ない一言。
「冗談、ちょっとキツイですよね」
その言い方が、不思議と、
胸にすっと入ってきた。
(……遥斗)
大げさでもない。
正義感を振りかざすでもない。
ただ、隣に立って、
静かに味方でいる。
(すこしは、頼りになるな)
里桜は、
小さく息を吐いて、
コーヒーを一口飲んだ。
「ありがとう。大丈夫です」
そう返すと、
遥斗は軽く頷いただけで、
それ以上、何も言わなかった。
その距離感が、
心地よくて――
でも、
それ以上、気にすることもなく、
笑い声の中に戻る。