完璧美人の私が恋したのは、眼鏡オタクのSEでした
 会議室の空気は、重かった。
 神崎里桜は、
 長いテーブルの端に座らされていた。

 正面には、総務部長。
 その隣に、役員が数名。
 そして、少し離れた位置に
 ――白石優希。

 扉が閉まった瞬間、逃げ場はなくなった。

 「神崎君」

 総務部長が、低い声で切り出す。

 「今回の件だが……
  君が昼休みに会社のパソコンで
  動画を見ていた、
  という報告が上がっている」

 胸が、ぐっと縮む。

 「……はい」

 里桜は、かろうじて答えた。

 「確かに、見たことはあります。
  でも――」

 「“でも”はいい」

 役員の一人が、被せるように言った。

 「事実として、
  総務部の端末から侵入があった」
 「そして、君は規則を逸脱した
  使い方をしていた」

 視線が、突き刺さる。
 (……決めつけてる)

 誰かが、楽をしたがっている。
 犯人を一人決めて、
 話を終わらせたいだけだ。

 「私……」

 声が、震えた。

 「確かに動画は見ました。
  でも、数回です。
  白石さんに注意されて、
  すぐやめました」
 「それに、ウイルス対策も――」

 「結果として、サーバーは止まった」

 淡々とした声。
 それだけで、空気は里桜に不利に傾く。
 (……私が、悪者なの?)

 唇を噛みしめた。
 目の奥が、熱くなる。
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