完璧美人の私が恋したのは、眼鏡オタクのSEでした
 その日の夜遅く
 警察署の自動ドアが、静かに開いた。

 外に出てきた優希の姿を見つけた瞬間、
 里桜の視界が、滲んだ。

 「……優希……」

 呼んだ声は、かすれていた。

 次の瞬間、
 里桜は走り出していた。

 考える前に、体が動いていた。

 「……っ!」

 ぶつかるように、その胸に抱きつく。

 腕を回す力が、思ったより強くて、
 自分でも驚く。

 「……よかった……」
 「ほんとに……よかった……」

 声が震えて、涙が止まらない。

 優希は一瞬だけ戸惑ってから、
 そっと、里桜の背中に腕を回した。

 「……心配かけて、ごめん」

 低い声。
 それだけで、
 胸の奥がきゅっと締めつけられる。

 「……無事で……」
 「無事で、本当によかった……」

 何度も、同じ言葉を繰り返す。
 止めようとしても、涙は溢れてくる。

 里桜は、
 優希のシャツをぎゅっと掴んだ。
 離したら、また失ってしまいそうで。

 「……大切な人だって……」
 「やっと、わかった……」

 そう呟いて、
 さらに強く抱きしめる。
 (もう離れたくない)

 優希は何も言わず、
 ただ、その力を受け止めた。

 警察署の前。
 人通りのある場所なのに、
 二人の周りだけ、
 音が遠のいたようだった。

  ——もう、離さない。
  ——もう、失わない。

 言葉にしなくても、
 その想いは、確かに伝わっていた。

 少し離れた場所で、
 一ノ瀬とマサトが、その様子を見ていた。

 「……若いな」

 一ノ瀬が、小さく笑う。

 「放っておいていいんですか」

 「いい」

 「今回は、主役はあいつらだ」

 マサトは、黙って頷いた。
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