完璧美人の私が恋したのは、眼鏡オタクのSEでした
 翌日の昼休み。
 里桜は、周囲をちらりと確認してから、
 そっとパソコンに
 USBメモリーを差し込んだ。
 (……よし)

 画面が静かに切り替わる。
 フォルダを開くと、
 そこには見覚えのあるグループ名。

 「……ほんとだ」

 小さく呟いて、
 再生ボタンをクリックする。

 流れ出したのは、
 最新のアイドルのライブ映像だった。

 カメラワークも綺麗で、
 音も悪くない。
 (すご……
  これ、まだ配信されてないやつ)

 思わず、
 口元が緩む。

 音量を最小にして、
 画面に顔を近づける。

 きらきらした照明。
 弾ける笑顔。
 完璧なダンス。
 (昼休みにこれ見られるの、最高じゃん)

 時間を忘れて、
 しばらく見入ってしまう。
 ふと時計を見て、
 慌てて動画を止めた。
 (危ない危ない)

 USBを抜き、
 何事もなかったように画面を閉じる。
 (智也、ダメ男かと思っていたが)
 (こういうとこは、
  ちょっとやるじゃん)

 バッグにUSBを戻しながら、
 里桜は満足そうに息を吐いた。
(昼休みの楽しみ、増えたな)

 それだけだった。
 その時の里桜にとっては、
 ただの、
 ちょっと嬉しい出来事だった。
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