完璧美人の私が恋したのは、眼鏡オタクのSEでした
5. 会社のPCで動画はダメです
午後
総務フロアは、
いつもと変わらない静けさだった。
優希は、ノートパソコンを抱え、
各デスクを順に回っていた。
「失礼します」
「少し確認しますね」
声は柔らかく、動きも丁寧だ。
マウスの動き。
起動ログ。
セキュリティ設定。
一台ずつ、
淡々と確認していく。
(……致命的な問題はない)
それが、
最初の印象だった。
ウイルス感染。
不正アクセスの痕跡。
不審な通信。
どれも、今のところは見当たらない。
(ただ……)
優希は、心の中で小さく眉を寄せる。
(全体的に、甘いな)
パスワード管理。
外部デバイスの扱い。
権限設定。
“問題ない”と
“安全”は、違う。
(システム自体も、少し古いな)
昼休みが近づき、
フロアの空気が緩み始める。
そのときだった。
ふと、
視界の端に、動く映像が入る。
――動画。
音は出ていない。
画面の端で、
鮮やかな色が揺れている。
優希は、足を止めた。
(……会社のPCで?動画鑑賞?)
近づくと、総務の女性社員が、
小さく画面を覗き込んでいる。
神崎里桜だった。
優希は、声を荒げることもなく、
軽く言った。
「……すみません、会社のパソコンで、
動画の視聴は控えてください」
それだけ。
注意というより、
事実の確認に近い口調。
里桜は、一瞬きょとんとし、
すぐにムッとした顔になる。
(なに、この人)
(偉そうに!)
心の中で、舌打ちする。
「……あ、はい」
口ではそう答え、
すぐに画面を閉じた。
優希は、それ以上、何も言わない。
「ありがとうございます」
そう言って、次のデスクへ向かう。
(……感じ悪)
里桜は、背中を見送りながら、
小さく息を吐いた。
(まあ、やっぱりまずいよね)
昼休みが終わり、
午後の業務が始まる。
その日以降。
里桜は、
会社のパソコンで、
動画を見ることは、一度もなかった。
(昼休みの楽しみ、減っちゃったな)
そんなことを思いながらも、
特に深くは考えない。
ただ――
フロアの端で、
黙々と画面を見つめる
白石優希の横顔だけが、
なぜか、
少しだけ記憶に残っていた。
総務フロアは、
いつもと変わらない静けさだった。
優希は、ノートパソコンを抱え、
各デスクを順に回っていた。
「失礼します」
「少し確認しますね」
声は柔らかく、動きも丁寧だ。
マウスの動き。
起動ログ。
セキュリティ設定。
一台ずつ、
淡々と確認していく。
(……致命的な問題はない)
それが、
最初の印象だった。
ウイルス感染。
不正アクセスの痕跡。
不審な通信。
どれも、今のところは見当たらない。
(ただ……)
優希は、心の中で小さく眉を寄せる。
(全体的に、甘いな)
パスワード管理。
外部デバイスの扱い。
権限設定。
“問題ない”と
“安全”は、違う。
(システム自体も、少し古いな)
昼休みが近づき、
フロアの空気が緩み始める。
そのときだった。
ふと、
視界の端に、動く映像が入る。
――動画。
音は出ていない。
画面の端で、
鮮やかな色が揺れている。
優希は、足を止めた。
(……会社のPCで?動画鑑賞?)
近づくと、総務の女性社員が、
小さく画面を覗き込んでいる。
神崎里桜だった。
優希は、声を荒げることもなく、
軽く言った。
「……すみません、会社のパソコンで、
動画の視聴は控えてください」
それだけ。
注意というより、
事実の確認に近い口調。
里桜は、一瞬きょとんとし、
すぐにムッとした顔になる。
(なに、この人)
(偉そうに!)
心の中で、舌打ちする。
「……あ、はい」
口ではそう答え、
すぐに画面を閉じた。
優希は、それ以上、何も言わない。
「ありがとうございます」
そう言って、次のデスクへ向かう。
(……感じ悪)
里桜は、背中を見送りながら、
小さく息を吐いた。
(まあ、やっぱりまずいよね)
昼休みが終わり、
午後の業務が始まる。
その日以降。
里桜は、
会社のパソコンで、
動画を見ることは、一度もなかった。
(昼休みの楽しみ、減っちゃったな)
そんなことを思いながらも、
特に深くは考えない。
ただ――
フロアの端で、
黙々と画面を見つめる
白石優希の横顔だけが、
なぜか、
少しだけ記憶に残っていた。