『爆走!メカニカル・シンデレラ 〜恋のバグは、無敵のガジェットでも直せません!〜』
第2話:恋の回路はショート寸前! 王子様とヒミツの暗闇
1. 恋のバグは、解析不能?
「……よし。最終チェック、完了。回路、オールグリーン!」
カスタム部の部室――旧校舎の地下にある工芸準備室に、私の誇らしげな声が響いた。
手元にあるのは、腕時計型の新型ガジェット。液晶画面にはデジタルな心電図のような波形が流れている。
「カンナっち、それなーに? また新しい爆弾?」
鏡の前でまつ毛をカールさせていた七海が、不思議そうに覗き込んできた。
「失礼ね、七海。これは**『バイオ・エモーション・デコーダー』。……通称、『恋のバグ発見器』**よ!」
「……は?」
隣で基盤をいじっていたシオンが、呆れたように眼鏡を指で押し上げた。
「如月、お前、ついに脳のネジが外れたか? 感情をデジタル化するなんて、現代科学では――」
「できるのよ、私の技術なら! 人間の心拍数、発汗、微弱な電気信号を解析すれば、今の感情が『怒り』なのか『喜び』なのか、あるいは……『バグ(恋)』なのかを、色で判別できるわ。ほら、見てて」
私は自分にその時計を装着した。画面は穏やかな「青(冷静)」を表示している。
その時、部室の重い扉がガラッと開いた。
「みんな、お疲れ様。差し入れ持ってきたよ」
現れたのは、学園の王子様・一ノ瀬湊くん。
夕陽をバックに爽やかに微笑む彼を見た瞬間、私の左腕が狂ったように鳴り始めた。
ピピピピピピピピ!!
液晶画面が、見たこともないような「真っ赤(最大警戒レベル)」に点滅し、火災報知器並みの音を立てる。
「うわああああ! な、なに!? 爆発するの!?」
雷太が椅子から転げ落ちる。
「……如月。お前の心臓、今、毎分140ビートを記録したぞ。オーバーヒートで死ぬ気か?」
シオンの冷静なツッコミが突き刺さる。
「ち、違うの! これは、その、センサーの初期不良で……! 決して一ノ瀬くんを見て動揺したわけじゃ……!」
「あはは、すごい時計だね。僕のスマホと同じくらい元気だ」
一ノ瀬くんは気に留める様子もなく、私の魔改造によってプロペラがついた自分のスマホを空中でキャッチした。
「それよりカンナさん。明日の『発明王決定戦・予選』に向けて、一つ相談があるんだ」
彼の顔が近づく。
バグ発見器は、もはや「赤」を通り越して「ピンク」の激しい光を放ち、部室中をミラーボールのように照らしていた。
2. ライバル襲来! 完璧主義の九条ハルト
翌日。学園の講堂は熱気に包まれていた。
『発明王決定戦』の予選会。優勝すれば学園祭のメインステージを自由に使える権利がもらえる、由緒ある(?)大会だ。
「……ふん。時代遅れのガラクタ遊びか」
ステージ袖で準備をしていた私たちに、冷ややかな声がかけられた。
現れたのは、生徒会の腕章をつけた少年。隣の中学校から転校してきたばかりの、九条ハルトだ。
彼は最新型のスマートグラスをかけ、白衣を羽織った「エリート」そのものの姿だった。
「九条くん、君もエントリーしてたんだね」
一ノ瀬くんが挨拶するが、九条は鼻で笑った。
「一ノ瀬湊。君のような『顔だけ』の男が、この学園を代表するなど笑止千万。僕が提供するのは、完璧なAI管理システム**『アテナ』**だ。これがあれば、生徒のスケジュール、成績、果ては校内の気温までAIが最適化する。……君たちが作っているような、スマホに羽を生やすだけの『おもちゃ』とは次元が違う」
九条の背後には、最新鋭のドローンと、巨大なサーバーラックが鎮座していた。
「な、なんですって……。おもちゃ……?」
私の手が、無意識にバッグの中の大型レンチを握りしめる。
機械をバカにするやつは許さない。それが例え、どれだけ高性能なAIを持っていようとも。
「いい? 九条くん。機械に一番大切なのは『完璧さ』じゃないわ。使う人をどれだけワクワクさせるか……『愛』なのよ!」
「愛? くだらない。感情ほど非効率なバグはないよ。……如月カンナ、君のそのガラクタと一緒に、ステージから叩き落としてあげるよ」
3. 暗闇のパニックと、重なる手
プレゼンが始まった。
九条ハルトが『アテナ』を学園のメインコンセントに接続した、その時だった。
「さあ、起動せよ。学園のすべてを僕の支配下に――」
九条がスイッチを入れた瞬間。
バチチチッ!!
という激しい火花とともに、講堂中のスピーカーが耳をつんざくようなノイズを上げた。
「……え? 負荷が……高すぎる? 馬鹿な、計算では学園の電力網なら耐えられるはず――」
九条の顔が青ざめる。
学園の古い建物は、彼の最新鋭サーバーが要求する膨大な電力を支えきれなかったのだ。
次の瞬間。
ドォォォォォン!!
激しい衝撃音とともに、講堂の照明がすべて落ちた。
「きゃああああ!」
「暗い! 何、爆発!?」
一瞬にして闇に包まれる会場。非常灯すら点かない。
完全な遮断(ブラックアウト)だ。
「みんな、落ち着いて! 席を立たないで!」
一ノ瀬くんが叫ぶが、混乱は収まらない。
しかも悪いことに、私が先日「ついでにアップデート」しておいた校内の防犯ゲートが、異常電圧を検知して**「完全閉鎖モード」**で作動してしまった。
「マズい……。私の改造したゲート、反応が良すぎて、外部からの救助も入れないわ!」
「如月、どうする!?」
暗闇の中、シオンの声が聞こえる。
「雷太は予備電源の確保に向かった! 七海は生徒の誘導中だ! お前は――」
「私は、メインサーバーを強制終了させる! 一ノ瀬くん、ついてきて!」
私は一ノ瀬くんの手を引いて、ステージ裏の制御室へと駆け出した。
真っ暗闇。何も見えない。
でも、私には「光」があった。
ピカッ、ピカッ、ピカッ……!
「カンナさん、君の腕……すごく光ってる!」
「……っ! 『恋のバグ発見器』よ! 緊張で出力が最大になってるの!」
私の左腕で、バグ発見器が鮮やかなピンク色の光を放っている。
皮肉にも、私の「王子様へのドキドキ」が、この暗闇を照らす唯一の懐中電灯になっていた。
4. 伏線回収:愛の魔改造スマホ
制御室にたどり着いたが、電子ロックがかかっていて扉が開かない。
「九条くんのAIが暴走して、システムをロックしてる……! 外側からは開けられないわ!」
絶体絶命。このままでは講堂が酸欠状態になるか、あるいはサーバーが発火してしまう。
「……一ノ瀬くん、あれを使って」
私は闇の中で、彼のポケットを指差した。
「君のスマホよ。プロペラをつけただけじゃない。あの子には、私が密かに**『学園内LANへの優先接続回路』**を組み込んでおいたの!」
「……えっ? そんなのいつの間に?」
「一ノ瀬くんが、いつもみんなのために走り回ってるから。……何かあった時、君の声一つで学園のどこにでも駆けつけられるようにしたかったのよ」
第1話で適当に魔改造したように見えたあのスマホ。実はカンナは、湊が「生徒一人一人のために頑張る姿」を影で見ていて、彼をサポートするための機能をこっそり追加していたのだ。
「……ありがとう、カンナさん。……行ってくれ、相棒!」
一ノ瀬くんがスマホを放り投げる。
スマホは「ピピッ!」と力強く鳴ると、換気口のわずかな隙間へと吸い込まれていった。
数分後。
スマホが内部のメインサーバーに直接接触し、カンナが仕込んでいた解除コードを流し込んだ。
ガシャン! と小気味よい音を立てて、制御室の扉が開く。
「やった……!」
私はすぐにメインレバーを引き、予備冷却システムを起動させた。
ゆっくりと、講堂に明かりが戻っていく。
5. 壊れない絆、アップデートされる心
事態は収束した。
九条ハルトは、自分の作ったシステムが学園を危険にさらしたことにショックを受け、ステージの隅でうなだれていた。
「……僕の負けだ。完璧な計算が、こんなアナログなガラクタに負けるなんて」
「九条くん」
一ノ瀬くんが歩み寄り、彼に手を差し伸べた。
「君の技術はすごかったよ。ただ、僕たちのメカニックは……ちょっとだけ『おせっかい』なんだ」
「……おせっかい?」
「使う人のことを考えて、勝手に改造しちゃうくらいにはね」
一ノ瀬くんは私を見て、悪戯っぽく笑った。
私は恥ずかしくなって、工具バッグの後ろに隠れた。
その時、私の腕のバグ発見器が、ふっと静かな「オレンジ色」に変わった。
(暖かい色……。これは、安心……?)
「カンナさん」
片付けが終わった後、一ノ瀬くんが二人きりのステージ裏で私を呼び止めた。
「さっきのピンク色の光……あれ、本当に『緊張のバグ』だけだったのかな?」
「……っ!! な、何よ、深い意味なんてないわよ! ただの計算エラーよ!」
「そう? 僕は……あのおかげで、君がどこにいるかすぐわかって、すごく安心したんだけどな」
彼は私の頭を、ポンポンと軽く叩いた。
油汚れのついた私の頭。
世界一かっこいい王子様の手。
「次の本選も、期待してるよ。僕の最高のエンジニア」
一ノ瀬くんが去った後、私はその場にヘナヘナと座り込んだ。
腕の時計を見る。
画面は再び「真っ赤」に染まり、今度はメロディアスなアラームを奏で始めた。
「……もう。こんなの、修理のしようがないじゃない」
恋の回路は、すでに完全修復不能(オーバーホール不可能)。
でも、この壊れたままの心拍数こそが、今の私にとっての「正常な動作(メインプログラム)」なんだ。
つづく
「……よし。最終チェック、完了。回路、オールグリーン!」
カスタム部の部室――旧校舎の地下にある工芸準備室に、私の誇らしげな声が響いた。
手元にあるのは、腕時計型の新型ガジェット。液晶画面にはデジタルな心電図のような波形が流れている。
「カンナっち、それなーに? また新しい爆弾?」
鏡の前でまつ毛をカールさせていた七海が、不思議そうに覗き込んできた。
「失礼ね、七海。これは**『バイオ・エモーション・デコーダー』。……通称、『恋のバグ発見器』**よ!」
「……は?」
隣で基盤をいじっていたシオンが、呆れたように眼鏡を指で押し上げた。
「如月、お前、ついに脳のネジが外れたか? 感情をデジタル化するなんて、現代科学では――」
「できるのよ、私の技術なら! 人間の心拍数、発汗、微弱な電気信号を解析すれば、今の感情が『怒り』なのか『喜び』なのか、あるいは……『バグ(恋)』なのかを、色で判別できるわ。ほら、見てて」
私は自分にその時計を装着した。画面は穏やかな「青(冷静)」を表示している。
その時、部室の重い扉がガラッと開いた。
「みんな、お疲れ様。差し入れ持ってきたよ」
現れたのは、学園の王子様・一ノ瀬湊くん。
夕陽をバックに爽やかに微笑む彼を見た瞬間、私の左腕が狂ったように鳴り始めた。
ピピピピピピピピ!!
液晶画面が、見たこともないような「真っ赤(最大警戒レベル)」に点滅し、火災報知器並みの音を立てる。
「うわああああ! な、なに!? 爆発するの!?」
雷太が椅子から転げ落ちる。
「……如月。お前の心臓、今、毎分140ビートを記録したぞ。オーバーヒートで死ぬ気か?」
シオンの冷静なツッコミが突き刺さる。
「ち、違うの! これは、その、センサーの初期不良で……! 決して一ノ瀬くんを見て動揺したわけじゃ……!」
「あはは、すごい時計だね。僕のスマホと同じくらい元気だ」
一ノ瀬くんは気に留める様子もなく、私の魔改造によってプロペラがついた自分のスマホを空中でキャッチした。
「それよりカンナさん。明日の『発明王決定戦・予選』に向けて、一つ相談があるんだ」
彼の顔が近づく。
バグ発見器は、もはや「赤」を通り越して「ピンク」の激しい光を放ち、部室中をミラーボールのように照らしていた。
2. ライバル襲来! 完璧主義の九条ハルト
翌日。学園の講堂は熱気に包まれていた。
『発明王決定戦』の予選会。優勝すれば学園祭のメインステージを自由に使える権利がもらえる、由緒ある(?)大会だ。
「……ふん。時代遅れのガラクタ遊びか」
ステージ袖で準備をしていた私たちに、冷ややかな声がかけられた。
現れたのは、生徒会の腕章をつけた少年。隣の中学校から転校してきたばかりの、九条ハルトだ。
彼は最新型のスマートグラスをかけ、白衣を羽織った「エリート」そのものの姿だった。
「九条くん、君もエントリーしてたんだね」
一ノ瀬くんが挨拶するが、九条は鼻で笑った。
「一ノ瀬湊。君のような『顔だけ』の男が、この学園を代表するなど笑止千万。僕が提供するのは、完璧なAI管理システム**『アテナ』**だ。これがあれば、生徒のスケジュール、成績、果ては校内の気温までAIが最適化する。……君たちが作っているような、スマホに羽を生やすだけの『おもちゃ』とは次元が違う」
九条の背後には、最新鋭のドローンと、巨大なサーバーラックが鎮座していた。
「な、なんですって……。おもちゃ……?」
私の手が、無意識にバッグの中の大型レンチを握りしめる。
機械をバカにするやつは許さない。それが例え、どれだけ高性能なAIを持っていようとも。
「いい? 九条くん。機械に一番大切なのは『完璧さ』じゃないわ。使う人をどれだけワクワクさせるか……『愛』なのよ!」
「愛? くだらない。感情ほど非効率なバグはないよ。……如月カンナ、君のそのガラクタと一緒に、ステージから叩き落としてあげるよ」
3. 暗闇のパニックと、重なる手
プレゼンが始まった。
九条ハルトが『アテナ』を学園のメインコンセントに接続した、その時だった。
「さあ、起動せよ。学園のすべてを僕の支配下に――」
九条がスイッチを入れた瞬間。
バチチチッ!!
という激しい火花とともに、講堂中のスピーカーが耳をつんざくようなノイズを上げた。
「……え? 負荷が……高すぎる? 馬鹿な、計算では学園の電力網なら耐えられるはず――」
九条の顔が青ざめる。
学園の古い建物は、彼の最新鋭サーバーが要求する膨大な電力を支えきれなかったのだ。
次の瞬間。
ドォォォォォン!!
激しい衝撃音とともに、講堂の照明がすべて落ちた。
「きゃああああ!」
「暗い! 何、爆発!?」
一瞬にして闇に包まれる会場。非常灯すら点かない。
完全な遮断(ブラックアウト)だ。
「みんな、落ち着いて! 席を立たないで!」
一ノ瀬くんが叫ぶが、混乱は収まらない。
しかも悪いことに、私が先日「ついでにアップデート」しておいた校内の防犯ゲートが、異常電圧を検知して**「完全閉鎖モード」**で作動してしまった。
「マズい……。私の改造したゲート、反応が良すぎて、外部からの救助も入れないわ!」
「如月、どうする!?」
暗闇の中、シオンの声が聞こえる。
「雷太は予備電源の確保に向かった! 七海は生徒の誘導中だ! お前は――」
「私は、メインサーバーを強制終了させる! 一ノ瀬くん、ついてきて!」
私は一ノ瀬くんの手を引いて、ステージ裏の制御室へと駆け出した。
真っ暗闇。何も見えない。
でも、私には「光」があった。
ピカッ、ピカッ、ピカッ……!
「カンナさん、君の腕……すごく光ってる!」
「……っ! 『恋のバグ発見器』よ! 緊張で出力が最大になってるの!」
私の左腕で、バグ発見器が鮮やかなピンク色の光を放っている。
皮肉にも、私の「王子様へのドキドキ」が、この暗闇を照らす唯一の懐中電灯になっていた。
4. 伏線回収:愛の魔改造スマホ
制御室にたどり着いたが、電子ロックがかかっていて扉が開かない。
「九条くんのAIが暴走して、システムをロックしてる……! 外側からは開けられないわ!」
絶体絶命。このままでは講堂が酸欠状態になるか、あるいはサーバーが発火してしまう。
「……一ノ瀬くん、あれを使って」
私は闇の中で、彼のポケットを指差した。
「君のスマホよ。プロペラをつけただけじゃない。あの子には、私が密かに**『学園内LANへの優先接続回路』**を組み込んでおいたの!」
「……えっ? そんなのいつの間に?」
「一ノ瀬くんが、いつもみんなのために走り回ってるから。……何かあった時、君の声一つで学園のどこにでも駆けつけられるようにしたかったのよ」
第1話で適当に魔改造したように見えたあのスマホ。実はカンナは、湊が「生徒一人一人のために頑張る姿」を影で見ていて、彼をサポートするための機能をこっそり追加していたのだ。
「……ありがとう、カンナさん。……行ってくれ、相棒!」
一ノ瀬くんがスマホを放り投げる。
スマホは「ピピッ!」と力強く鳴ると、換気口のわずかな隙間へと吸い込まれていった。
数分後。
スマホが内部のメインサーバーに直接接触し、カンナが仕込んでいた解除コードを流し込んだ。
ガシャン! と小気味よい音を立てて、制御室の扉が開く。
「やった……!」
私はすぐにメインレバーを引き、予備冷却システムを起動させた。
ゆっくりと、講堂に明かりが戻っていく。
5. 壊れない絆、アップデートされる心
事態は収束した。
九条ハルトは、自分の作ったシステムが学園を危険にさらしたことにショックを受け、ステージの隅でうなだれていた。
「……僕の負けだ。完璧な計算が、こんなアナログなガラクタに負けるなんて」
「九条くん」
一ノ瀬くんが歩み寄り、彼に手を差し伸べた。
「君の技術はすごかったよ。ただ、僕たちのメカニックは……ちょっとだけ『おせっかい』なんだ」
「……おせっかい?」
「使う人のことを考えて、勝手に改造しちゃうくらいにはね」
一ノ瀬くんは私を見て、悪戯っぽく笑った。
私は恥ずかしくなって、工具バッグの後ろに隠れた。
その時、私の腕のバグ発見器が、ふっと静かな「オレンジ色」に変わった。
(暖かい色……。これは、安心……?)
「カンナさん」
片付けが終わった後、一ノ瀬くんが二人きりのステージ裏で私を呼び止めた。
「さっきのピンク色の光……あれ、本当に『緊張のバグ』だけだったのかな?」
「……っ!! な、何よ、深い意味なんてないわよ! ただの計算エラーよ!」
「そう? 僕は……あのおかげで、君がどこにいるかすぐわかって、すごく安心したんだけどな」
彼は私の頭を、ポンポンと軽く叩いた。
油汚れのついた私の頭。
世界一かっこいい王子様の手。
「次の本選も、期待してるよ。僕の最高のエンジニア」
一ノ瀬くんが去った後、私はその場にヘナヘナと座り込んだ。
腕の時計を見る。
画面は再び「真っ赤」に染まり、今度はメロディアスなアラームを奏で始めた。
「……もう。こんなの、修理のしようがないじゃない」
恋の回路は、すでに完全修復不能(オーバーホール不可能)。
でも、この壊れたままの心拍数こそが、今の私にとっての「正常な動作(メインプログラム)」なんだ。
つづく