『爆走!メカニカル・シンデレラ 〜恋のバグは、無敵のガジェットでも直せません!〜』
第3話:メカニカル・シンデレラの「ガラスの靴」
1. 鳴り止まない「恋の警告音(アラート)」
「……やっぱり、このデバイス、設計ミスだわ」
放課後の旧校舎地下、カスタム部の部室。私、如月カンナは机に突っ伏して、真っ赤に光る腕時計型のガジェット――『恋のバグ発見器』を睨みつけていた。
昨日の停電事件。暗闇の中で一ノ瀬湊くんに手を握られた瞬間、この時計はありえない速度で点滅し、ついには再起動を繰り返す「フリーズ状態」に陥った。
私の心臓の鼓動を「致命的なエラー」と検知したまま、いまだに元に戻らない。
「カンナっち、それ設計ミスじゃなくて『仕様』でしょ? 王子へのトキメキが強すぎて、カンナっちの脳内CPUがパンクしてるだけだって!」
鏡の前でヘアピンを調整していた七海が、ニヤニヤしながらこっちを見た。
「ち、違うわよ七海! これは磁気嵐とか、静電気の影響で……!」
「はいはい、認めなさいよ。あ、それより見て。発明王決定戦の『一次予選テーマ』が発表されたわよ」
七海が指さした部室の大型モニターに、シオンが情報を映し出す。
【第10回・学園発明王決定戦:一次予選テーマ】
『ペアで挑め! 心を繋ぐシンクロ・ガジェット』
「ペア……?」
私は思わず声を漏らした。
「ああ。二人一組で、互いの動きや心を完全に同期させる発明品を作ることが条件だ」
シオンが眼鏡を光らせながら、淡々と説明を続ける。
「優勝候補の九条ハルトは、すでに生徒会長の令嬢と組んで『超脳波通信ヘルメット』を開発中らしい。……で、一ノ瀬。お前はどうするんだ?」
部室のソファに座って、私の改造スマホ(現在はプロペラを畳んで大人しくなっている)を磨いていた湊くんが、顔を上げた。
「決まってるじゃないか」
彼は迷いのない足取りで私のそばに歩み寄ると、私の油で汚れた右手を、そっと、でも力強く取った。
「僕のパートナーは、世界で一人だけ。……カンナさん、君しかいない」
「……っ!!」
私の腕で、壊れていたはずの『バグ発見器』が、ピロリロリン! と甲高い音を立てて再び真っ赤に発光した。
バカ。私の心臓。少しは空気を読んでよ!
2. 伏線:未完成の「ガラスの靴」
「一次予選まであと三日。カンナ、何かアイディアはあるか?」
シオンの問いに、私はバッグから一枚の設計図を取り出した。
「……実は、ずっと考えてたものがあるの。名付けて、『シンクロ・ステップ・ブーツ』」
それは、特殊な圧力センサーと小型モーターを内蔵した靴。
二人がこれを履けば、片方の足の動きが瞬時にもう片方へ伝わり、ダンスでも格闘技でも、完璧に呼吸を合わせることができる。
「でも、問題があるわ。この靴、左右の信号を繋ぐ『同期コア』の素材が、まだ見つかっていないの。強すぎる衝撃には耐えられないし、繊細すぎると通信が途切れる……。まさに、壊れやすい『ガラスの靴』なのよ」
「ガラスの靴か。シンデレラにぴったりだね」
湊くんが優しく笑う。
その時、部室の隅で爆竹をいじっていた雷太が、勢いよく立ち上がった。
「よっしゃ! 開発なら俺に任せろ! 衝撃耐性テストなら、俺の特製クラッカーでガンガン試してやるっす!」
「雷太、爆破は禁止よ! せっかくの精密機器がバラバラになっちゃう!」
私たちは、予選に向けて開発を始めた。
七海は靴のデザインと「王子と並んだ時に見劣りしないカンナの衣装」を担当。
シオンは同期プログラムの最適化。
雷太は……ひたすら「壊れない靴底」の素材を探して、学校中の備品を(勝手に)強度テストし始めた。
これこそが、私たちの「カスタム部」。
一人じゃ何もできないけど、みんながいれば、どんな無理難題も「魔改造」して正解にできる。
だが、私は気づいていなかった。
私のデスクの引き出しに、修理を頼まれていた「あるもの」を入れっぱなしにしていたことを。
それは、昨日の事件で九条ハルトが落とした、壊れたスマートグラスの「破片」だった。
3. 王子の不意打ちと、素顔のヒロイン
開発二日目の夜。
部室に二人きりで残って、私は靴の基盤と格闘していた。
ツナギの袖をまくり、髪はボサボサのポニーテール。頬にはハンダ付けの際についた煤(すす)が残っている。
「……うーん、やっぱり。左右の誤差が0.01秒発生してる。これじゃ、踊った時に転んじゃうわ」
「カンナさん」
背後から声をかけられ、びくん! と肩が跳ねる。
湊くんが、温かいココアを二つ持って立っていた。
「……あ、ありがとう。一ノ瀬くん。でも、今はそれどころじゃ……」
「休憩も仕事のうちだよ。……ほら、顔に煤がついてる」
湊くんが、ポケットから綺麗な白いハンカチを取り出した。
「あ、自分で拭くわ!」
慌てて手を伸ばした私を遮るように、彼は私の顎をそっと指先で上向かせた。
「動かないで。……せっかくの可愛い顔が、台無しだよ」
「……っっ!!」
彼の顔が、すぐ近くにある。
ミルクティー色の髪が揺れて、爽やかな石鹸の香りが鼻をくすぐる。
彼の手が、私の頬に触れる。
その瞬間、私の頭の中は「過負荷によるシステムダウン」寸前だった。
(な、なに言ってるの、この王子……! 煤まみれで、ツナギ姿の私が、可愛いわけないじゃない。……でも、どうして。こんなに胸が苦しいのは、どこのパーツが故障したからなの……?)
「カンナさんは、自分を『機械オタクの冴えない女子』だと思ってるかもしれないけど。僕にとっては、誰よりも輝いてる『最高のエンジニア』なんだ」
湊くんの瞳が、真剣な光を帯びる。
「君が僕のために作ってくれる靴なら、僕はどこまでだって走れる。……だから、自分を信じて」
「……一ノ瀬、くん」
私は、真っ赤な顔でココアを一口飲んだ。
甘くて、熱くて。
今まで感じたことのない「恋のエネルギー」が、私の回路を満たしていくのを感じた。
4. 伏線回収:一次予選の罠
一次予選当日。
会場のステージには、多くのペアが集まっていた。
九条ハルトは、余裕の表情で私たちの前に立った。
「如月カンナ。君の靴、通信不良で動かなくなるのがオチだよ。学園のメイン電波は、すべて僕のシステムが優先的に使うようセットしてあるからね」
「……え?」
九条が指を鳴らすと、会場中に強力な妨害電波(ジャミング)が流れた。
他のペアのガジェットが次々と沈黙し、混乱が広がる。
私たちの『シンクロ・ステップ・ブーツ』も、接続ランプが消えかかっていた。
「やっぱり……九条くん。あなたは完璧な計算で勝とうとするのね」
私は、バッグから「あるもの」を取り出した。
それは、数日前にデスクの引き出しに見つけた九条のスマートグラスの破片を、私が勝手に「魔改造」して組み込んだ、特製の**『磁気シールド・ブローチ』**。
「でも、忘れないで。私は機械を『愛してる』の。壊れたものには、直した人の想いが宿るんだから!」
私がブローチのスイッチを入れた瞬間。
九条の妨害電波は、ブローチに内蔵された「逆位相チップ」によって相殺され、私たちの靴の接続ランプが、これまでにないほど強く、青く輝いた。
「な……!? 僕のシステムの脆弱性を、あんな破片から解析したというのか!?」
「シオン! 通信路確保! 雷太、演出スタートよ!」
「よっしゃああ! 祝砲一発、いくっすよ!」
雷太が放ったド派手な(でも安全な)紙吹雪と光の演出の中、私と湊くんはステージ中央へ。
「一ノ瀬くん、いくわよ!」
「ああ、僕たちのリズムを見せつけよう!」
靴の同期率は、なんと120%。
私たちが一歩踏み出すたびに、床から美しい光の輪が広がる(七海が仕込んだ、足元を美しく見せるLED演出だ)。
二人の心拍数が重なり、動きが重なり――。
それはもはや、科学を超えた「魔法」のようなダンスだった。
結び:次なるバグの予感
一次予選は見事、ダントツの1位通過。
「カスタム部」の仲間たちとハイタッチを交わし、喜びを分かち合う。
「カンナっち、最高にかっこよかったよ! まさにメカニカル・シンデレラ!」
七海が私を抱きしめる。
「……フン、計算外の同期率だったな。だが、悪くない」
シオンも、少しだけ口角を上げた。
夕暮れの屋上。
一人で靴のメンテナンスをしていた私のところに、湊くんがやってきた。
「カンナさん。……今日のダンス、忘れないよ」
彼は、私の手首に残っていた『恋のバグ発見器』を見た。
そこには、エラー表示ではなく、小さな**『ハートマーク』**が点灯していた。
「……これ、新しい機能?」
「え? あ……! 違うの、これは……その……! ログが正常に記録されたっていう……サインよ!」
私は慌てて時計を隠した。
本当は、わかっている。
シオンがこっそりプログラムを書き換えて、私が湊くんに「完全にシンクロ(片思い)」した時だけ、そのマークが出るようにしたんだってこと。
「ねえ、カンナさん。二次予選のテーマ、もう発表されたんだけど……」
湊くんがスマホを見せる。そこには、信じられない文字が躍っていた。
【二次予選テーマ:『パートナーへの、言葉なき愛の告白』】
「……は、はいぃぃぃぃ!?」
私の叫び声が、放課後の校舎に響き渡る。
天才メカニック・如月カンナ。
技術は無敵だけど、この「最大級の難題」をどう修理(解決)すればいいのか、まだ全く設計図が見えていなかった。
(恋のオーバーホールは、まだまだ終わらない――!)
つづく
「……やっぱり、このデバイス、設計ミスだわ」
放課後の旧校舎地下、カスタム部の部室。私、如月カンナは机に突っ伏して、真っ赤に光る腕時計型のガジェット――『恋のバグ発見器』を睨みつけていた。
昨日の停電事件。暗闇の中で一ノ瀬湊くんに手を握られた瞬間、この時計はありえない速度で点滅し、ついには再起動を繰り返す「フリーズ状態」に陥った。
私の心臓の鼓動を「致命的なエラー」と検知したまま、いまだに元に戻らない。
「カンナっち、それ設計ミスじゃなくて『仕様』でしょ? 王子へのトキメキが強すぎて、カンナっちの脳内CPUがパンクしてるだけだって!」
鏡の前でヘアピンを調整していた七海が、ニヤニヤしながらこっちを見た。
「ち、違うわよ七海! これは磁気嵐とか、静電気の影響で……!」
「はいはい、認めなさいよ。あ、それより見て。発明王決定戦の『一次予選テーマ』が発表されたわよ」
七海が指さした部室の大型モニターに、シオンが情報を映し出す。
【第10回・学園発明王決定戦:一次予選テーマ】
『ペアで挑め! 心を繋ぐシンクロ・ガジェット』
「ペア……?」
私は思わず声を漏らした。
「ああ。二人一組で、互いの動きや心を完全に同期させる発明品を作ることが条件だ」
シオンが眼鏡を光らせながら、淡々と説明を続ける。
「優勝候補の九条ハルトは、すでに生徒会長の令嬢と組んで『超脳波通信ヘルメット』を開発中らしい。……で、一ノ瀬。お前はどうするんだ?」
部室のソファに座って、私の改造スマホ(現在はプロペラを畳んで大人しくなっている)を磨いていた湊くんが、顔を上げた。
「決まってるじゃないか」
彼は迷いのない足取りで私のそばに歩み寄ると、私の油で汚れた右手を、そっと、でも力強く取った。
「僕のパートナーは、世界で一人だけ。……カンナさん、君しかいない」
「……っ!!」
私の腕で、壊れていたはずの『バグ発見器』が、ピロリロリン! と甲高い音を立てて再び真っ赤に発光した。
バカ。私の心臓。少しは空気を読んでよ!
2. 伏線:未完成の「ガラスの靴」
「一次予選まであと三日。カンナ、何かアイディアはあるか?」
シオンの問いに、私はバッグから一枚の設計図を取り出した。
「……実は、ずっと考えてたものがあるの。名付けて、『シンクロ・ステップ・ブーツ』」
それは、特殊な圧力センサーと小型モーターを内蔵した靴。
二人がこれを履けば、片方の足の動きが瞬時にもう片方へ伝わり、ダンスでも格闘技でも、完璧に呼吸を合わせることができる。
「でも、問題があるわ。この靴、左右の信号を繋ぐ『同期コア』の素材が、まだ見つかっていないの。強すぎる衝撃には耐えられないし、繊細すぎると通信が途切れる……。まさに、壊れやすい『ガラスの靴』なのよ」
「ガラスの靴か。シンデレラにぴったりだね」
湊くんが優しく笑う。
その時、部室の隅で爆竹をいじっていた雷太が、勢いよく立ち上がった。
「よっしゃ! 開発なら俺に任せろ! 衝撃耐性テストなら、俺の特製クラッカーでガンガン試してやるっす!」
「雷太、爆破は禁止よ! せっかくの精密機器がバラバラになっちゃう!」
私たちは、予選に向けて開発を始めた。
七海は靴のデザインと「王子と並んだ時に見劣りしないカンナの衣装」を担当。
シオンは同期プログラムの最適化。
雷太は……ひたすら「壊れない靴底」の素材を探して、学校中の備品を(勝手に)強度テストし始めた。
これこそが、私たちの「カスタム部」。
一人じゃ何もできないけど、みんながいれば、どんな無理難題も「魔改造」して正解にできる。
だが、私は気づいていなかった。
私のデスクの引き出しに、修理を頼まれていた「あるもの」を入れっぱなしにしていたことを。
それは、昨日の事件で九条ハルトが落とした、壊れたスマートグラスの「破片」だった。
3. 王子の不意打ちと、素顔のヒロイン
開発二日目の夜。
部室に二人きりで残って、私は靴の基盤と格闘していた。
ツナギの袖をまくり、髪はボサボサのポニーテール。頬にはハンダ付けの際についた煤(すす)が残っている。
「……うーん、やっぱり。左右の誤差が0.01秒発生してる。これじゃ、踊った時に転んじゃうわ」
「カンナさん」
背後から声をかけられ、びくん! と肩が跳ねる。
湊くんが、温かいココアを二つ持って立っていた。
「……あ、ありがとう。一ノ瀬くん。でも、今はそれどころじゃ……」
「休憩も仕事のうちだよ。……ほら、顔に煤がついてる」
湊くんが、ポケットから綺麗な白いハンカチを取り出した。
「あ、自分で拭くわ!」
慌てて手を伸ばした私を遮るように、彼は私の顎をそっと指先で上向かせた。
「動かないで。……せっかくの可愛い顔が、台無しだよ」
「……っっ!!」
彼の顔が、すぐ近くにある。
ミルクティー色の髪が揺れて、爽やかな石鹸の香りが鼻をくすぐる。
彼の手が、私の頬に触れる。
その瞬間、私の頭の中は「過負荷によるシステムダウン」寸前だった。
(な、なに言ってるの、この王子……! 煤まみれで、ツナギ姿の私が、可愛いわけないじゃない。……でも、どうして。こんなに胸が苦しいのは、どこのパーツが故障したからなの……?)
「カンナさんは、自分を『機械オタクの冴えない女子』だと思ってるかもしれないけど。僕にとっては、誰よりも輝いてる『最高のエンジニア』なんだ」
湊くんの瞳が、真剣な光を帯びる。
「君が僕のために作ってくれる靴なら、僕はどこまでだって走れる。……だから、自分を信じて」
「……一ノ瀬、くん」
私は、真っ赤な顔でココアを一口飲んだ。
甘くて、熱くて。
今まで感じたことのない「恋のエネルギー」が、私の回路を満たしていくのを感じた。
4. 伏線回収:一次予選の罠
一次予選当日。
会場のステージには、多くのペアが集まっていた。
九条ハルトは、余裕の表情で私たちの前に立った。
「如月カンナ。君の靴、通信不良で動かなくなるのがオチだよ。学園のメイン電波は、すべて僕のシステムが優先的に使うようセットしてあるからね」
「……え?」
九条が指を鳴らすと、会場中に強力な妨害電波(ジャミング)が流れた。
他のペアのガジェットが次々と沈黙し、混乱が広がる。
私たちの『シンクロ・ステップ・ブーツ』も、接続ランプが消えかかっていた。
「やっぱり……九条くん。あなたは完璧な計算で勝とうとするのね」
私は、バッグから「あるもの」を取り出した。
それは、数日前にデスクの引き出しに見つけた九条のスマートグラスの破片を、私が勝手に「魔改造」して組み込んだ、特製の**『磁気シールド・ブローチ』**。
「でも、忘れないで。私は機械を『愛してる』の。壊れたものには、直した人の想いが宿るんだから!」
私がブローチのスイッチを入れた瞬間。
九条の妨害電波は、ブローチに内蔵された「逆位相チップ」によって相殺され、私たちの靴の接続ランプが、これまでにないほど強く、青く輝いた。
「な……!? 僕のシステムの脆弱性を、あんな破片から解析したというのか!?」
「シオン! 通信路確保! 雷太、演出スタートよ!」
「よっしゃああ! 祝砲一発、いくっすよ!」
雷太が放ったド派手な(でも安全な)紙吹雪と光の演出の中、私と湊くんはステージ中央へ。
「一ノ瀬くん、いくわよ!」
「ああ、僕たちのリズムを見せつけよう!」
靴の同期率は、なんと120%。
私たちが一歩踏み出すたびに、床から美しい光の輪が広がる(七海が仕込んだ、足元を美しく見せるLED演出だ)。
二人の心拍数が重なり、動きが重なり――。
それはもはや、科学を超えた「魔法」のようなダンスだった。
結び:次なるバグの予感
一次予選は見事、ダントツの1位通過。
「カスタム部」の仲間たちとハイタッチを交わし、喜びを分かち合う。
「カンナっち、最高にかっこよかったよ! まさにメカニカル・シンデレラ!」
七海が私を抱きしめる。
「……フン、計算外の同期率だったな。だが、悪くない」
シオンも、少しだけ口角を上げた。
夕暮れの屋上。
一人で靴のメンテナンスをしていた私のところに、湊くんがやってきた。
「カンナさん。……今日のダンス、忘れないよ」
彼は、私の手首に残っていた『恋のバグ発見器』を見た。
そこには、エラー表示ではなく、小さな**『ハートマーク』**が点灯していた。
「……これ、新しい機能?」
「え? あ……! 違うの、これは……その……! ログが正常に記録されたっていう……サインよ!」
私は慌てて時計を隠した。
本当は、わかっている。
シオンがこっそりプログラムを書き換えて、私が湊くんに「完全にシンクロ(片思い)」した時だけ、そのマークが出るようにしたんだってこと。
「ねえ、カンナさん。二次予選のテーマ、もう発表されたんだけど……」
湊くんがスマホを見せる。そこには、信じられない文字が躍っていた。
【二次予選テーマ:『パートナーへの、言葉なき愛の告白』】
「……は、はいぃぃぃぃ!?」
私の叫び声が、放課後の校舎に響き渡る。
天才メカニック・如月カンナ。
技術は無敵だけど、この「最大級の難題」をどう修理(解決)すればいいのか、まだ全く設計図が見えていなかった。
(恋のオーバーホールは、まだまだ終わらない――!)
つづく