丘の上の小さな 美容室

番外編 千紗と恵


 千紗は気づいていた。
 恵の深青を見つめるその目に哀愁と情熱が入り混じっていることを。
 恵は言った。
 こんなに上手な人初めてだと感動していた。施術のあと、それとなく深青を口説いていたことも知っている。けれど深青は鈍いから。全く気づかずにお客さんとしての対応しかせず恵をお見送りした。
 深青が、恵の想いに気づくことなんてないのだ。だって深青は、小さな美容室を経営するイケメンでガタイのよいどストライクのセフレに夢中なのだから。
 千紗は思った。
 足繁く通う恵が、なんだか不憫で滑稽だった。
 あとからそのセフレが恵の親友と聞いてさらにその思いは深まった。
 ああ、不憫でならない。
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