冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
「皮肉なことだけれど、彼女のしたことが私たちが真実に向き合うきっかけをくれたの」
湊の目が、微かに見開かれる。
「もしあの日、彼女に契約書を見せられなかったら……私は臆病なまま、自分の気持ちに蓋をして、あなたに本心をぶつけることもできなかったかもしれない」
私の言葉を噛みしめるように、湊が深く息を吐き出した。
「だから、もう恨んでいません。負の感情に囚われるより、私たちは私たちの幸せを、ただ築いていくだけ。……ねえ、湊?」
やがて、強張っていた彼の肩の力がふっと抜け、目尻に柔らかな皺が寄った。
「……お前は、本当に強くなったな」
「あなたが教えてくれたんです。本当に大切なものを守るって、どういうことか」
湊は慈しむような光を瞳に宿し、私の手を固く握った。
「そうか。分かった。お前の望む通りにしよう」
結局、彼女や彼女の実家である鳳家とのビジネス関係をすべて解消し、業界内でも今回の不適切な言動を事実として共有するに留めた。
直接的な裁きを下すより、彼女の存在を私たちの人生から完全に切り離すこと。それが一番の解決だと思えた。
湊と一緒に幸せな未来を作ることのほうが、私にとっては大切だから。