冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

それから数日後の三月某日。

「最後に……私事で恐縮ですが、皆さんにお知らせがあります」

四半期に一度の全社定例会議の場で、社長として締めの挨拶をしていた湊が迷いのない声を響かせた。

会議室が静まり返る中、私は後方の席で湊の姿を追っていた。

すると、壇上の彼が一瞬だけ視線を動かし、私を真っ直ぐに射抜く。

その瞳に宿った強い光に、私は息を呑んだ。

「広報部の高嶺紗良は、私の婚約者です」

一瞬の静寂の後、会場は驚きとどよめきに包まれた。

けれどすぐに、最前列にいた秘書の吉田さんが弾けるような笑顔で拍手を始めた。

「おめでとうございます!」

本橋さんも立ち上がり、周囲を促すように手を叩く。やがて祝福の音は波のように広がり、会議室全体を温かく包み込んでいった。

「近々、式を挙げます。これまで秘密にしていた無礼を許してほしい。彼女こそが、私が生涯をかけて支えると決めた唯一の女性です」



会議が締めくくられ、湊が壇上から降りた瞬間、会場は一気に祝福の喧騒に包まれた。

「高嶺さん、本当におめでとうございます!」

同僚たちが次々と駆け寄り、私の周りに笑顔の輪ができる。
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