冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

最大の取引先が予告なく契約を打ち切り、他の取引先も次々と離れていった。まるで、誰かが見えない糸を引いているかのように。

資産はすべて処分され、婚約者にはスマホのメッセージ一つで別れを告げられた。

『紗良、ごめん。君とはもう釣り合わない。うちの親も反対していてさ』

結局、彼が欲しかったのは私ではなく、「高嶺家の令嬢」という肩書きだった。

六年前に母を病気で亡くしていた私にとって、父は唯一の家族だった。その父が過労と心労で倒れ、入院。

さらに、心労が引き金となって持病が急激に悪化してしまったという。

私は大学を辞め、派遣とアルバイトを掛け持ちする日々。なのに、お金は足りない。

父の治療費を払うと、自分の食費は一日千円以下。

それでも、母の形見のパールネックレスだけは、どんなに困っても売らなかった。

これだけは、私と母を繋ぐ最後の絆だから。

気がつくと、足はいつもの駅とは違う繁華街へ向かっていた。

ネオンが灯り始めた街。行き交う人々は皆、どこか満たされた顔をしている。

私だけが、この世界から取り残されているような気がした。

そして――路地の奥に、小さなバーの看板が見えた。

『Bar Étoile』

こんな場所に来る余裕なんてないのに。足が勝手に動いていた。

もう、限界だった。
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