冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

湊さんの誠実さが、今はなぜか、突き放されたように感じて悲しかった。

「俺は、お前の意思を最優先する」

私は、父の顔を思い浮かべる。

病室で、痩せた体で横たわる父。

『紗良、すまないな。お前にこんな苦労をかけて』

そう言って、申し訳なさそうに笑う父。

この契約を受ければ、父を救える。

でも――。

「これは……ビジネスなんですね」

「ビジネス?」

湊さんの表情が、強張る。

「お前は、これをビジネスだと思うのか」

その声に、僅かな怒りが滲む。

「だって……半年後には離婚するんでしょう? それなら――」

「違う!」

湊さんが、私の両肩を掴む。強い力だけど、痛くない。

「これは、ビジネスなんかじゃない。俺は本気だ。ただのビジネス相手を、あんなふうに抱いたりはしない」

射抜くような視線に、息が止まる。

「俺は、お前を守りたい。お前を、俺の隣に置きたい。お前以外、欲しくないんだ」

その言葉に、胸が苦しくなる。

「でも……私は、あなたとは釣り合わない」

「釣り合う、釣り合わないじゃない」

湊さんの手が、私の頬を包む。

「俺が、お前を選んだんだ。それ以外に、理由が必要か?」

その真剣な眼差しに、言葉を失う。

沈黙が流れる。

窓の外には、東京の夜景。

私は、ゆっくりと口を開いた。

「……わかりました」

湊さんの瞳が、かすかに揺れる。

「ただし、条件があります」

「何だ?」
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