冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

第2話 一夜の夢と、冷徹CEOの再臨


足を踏み入れた先は、静謐な空気に満ちたスイートルームだった。

壁一面の大きな窓からは、宝石を散りばめたような東京の夜景が一望できる。

「……綺麗」

思わず呟くと、隣に立つ彼は夜景ではなく、私を見つめていた。

その視線の熱さに気づいた瞬間、鼓動が早まる。

「お前の名前を教えてくれるか?」

「紗良。高嶺(たかみね)紗良(さら)

「……っ」

名乗った瞬間、彼が息を飲むのが分かった。

「そうか、紗良……」

彼は私の名前を、噛みしめるように繰り返した。まるで、魂に刻みつけるみたいに。

「いい名前だ。覚えておく」

「あなたは?」

一瞬の沈黙のあと、彼は瞳を伏せて答える。

「……(みなと)。それだけでいい」

湊。その名前を、私も胸に刻む。

彼は何も言わず、私の前に立った。

コートの襟に触れた指先が、外す前に止まる。

「本当に、いいのか? 後悔しないか?」

耳元で囁かれた声が、微かに震えている。

私は、彼の背中にそっと腕を回した。

「お願い。今夜だけ……私を、忘れさせて」

その言葉に、彼の呼吸が乱れるのがわかった。
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