隣にいる理由〜選ばれるはずのなかった私が、あなたの妻になるまで〜
『東京都に本社を置く神田食品ホールディングス(代表取締役・神田潤一)で、経営課題が相次いで噴出している。先代社長の神田総一郎氏から代替わりして以降、同社の業績は低迷基調に入り、かつての成長路線から一転して苦しい経営環境に直面している。
背景には、世界情勢の変動を受けた海外事業の赤字化がある。為替変動や物流コストの高騰、現地需要の減退が重なり、同社の海外展開は採算悪化に直面。これに伴い投資家の警戒感も強まり、株価は下落傾向が続いている。株主からは、経営戦略の見直しや情報開示の強化を求める声も上がりつつある。
こうした状況を受け、同社は経営体制の刷新に踏み切る構えだ。複数の関係者によると、現在専務取締役を務める神田遼氏が次期社長に就任する見通しで、世代交代による立て直しに期待が寄せられている。新体制では、海外事業の再編と収益基盤の強化、さらに株主対策を含むガバナンス面の強化が急務となる。
一方で、市場関係者からは「環境要因だけでなく、経営判断そのものが問われている」との厳しい指摘もある。神田食品ホールディングスが積み重なる課題をどのように克服していくのか、注目が集まっている。』
夕飯を作る気になれなかった私は、コンビニでお弁当を購入し、自宅でそれを食べながらスマホを触っていたのだけど、食事を忘れその記事を食い入るように読んだ。
そして、記事の内容で、今、遼さんが窮地に立たされていることを知った。
これまでの経営責任を取って、遼さんが社長に就任するとなれば、今後は否応なしに彼を支える配偶者のことが話題に上がる。
この前の話は保留になったままだ。
いったいどうなるのだろう……
遼さんに連絡を取ろうか迷ったけれど、今、私の気持ちを伝えたら、きっと彼の重荷になる。
彼のことを試すようなことを言った手前、私からはどうにも身動きが取れなくて、彼からの連絡を待つしかなかった。
そして遼さんからホテルの部屋に戻ってきたと連絡があったのは、それから一週間を過ぎた頃のことだった。
その日、私は公休日で部屋の掃除を終えて、ひと息つこうとお湯を沸かしていた。
頂き物のフレーバーコーヒーを飲むため、マグカップにお湯を注ぎ、それを持ってダイニングテーブルへ移動する。
テーブルの上に置いていたスマホの画面が明るくなり、何かのメッセージを受信したことに気付いたけれど、それがまさか遼さんからとは思ってもみなかった。
コーヒーを飲んで、ふうっとひと息吐いた時、何気なくスマホを手に取ってロック画面を解除した。
ほかにもメールの通知などがあり、遼さんのアイコンが埋もれていて気付くのが遅れたため、遼さんのトーク画面にメッセージの通知を見つけた時は思わず手が震えてスマホを落としそうになった。
現在の時刻は11時15分。
メッセージを受信したのは11時5分、ちょうど10分前だ。
私はメッセージ画面を開きメッセージを読む。
『ようやくホテルに戻りました。これからしばらくの間ホテルに滞在します』
絵文字や顔文字、スタンプなど押されていない、至ってシンプルな文章だ。
私は深呼吸を一つして、メッセージを打ち込み、送信した。
『お疲れさまです。今日は公休日なので、昼食を作りに行きましょうか?』
背景には、世界情勢の変動を受けた海外事業の赤字化がある。為替変動や物流コストの高騰、現地需要の減退が重なり、同社の海外展開は採算悪化に直面。これに伴い投資家の警戒感も強まり、株価は下落傾向が続いている。株主からは、経営戦略の見直しや情報開示の強化を求める声も上がりつつある。
こうした状況を受け、同社は経営体制の刷新に踏み切る構えだ。複数の関係者によると、現在専務取締役を務める神田遼氏が次期社長に就任する見通しで、世代交代による立て直しに期待が寄せられている。新体制では、海外事業の再編と収益基盤の強化、さらに株主対策を含むガバナンス面の強化が急務となる。
一方で、市場関係者からは「環境要因だけでなく、経営判断そのものが問われている」との厳しい指摘もある。神田食品ホールディングスが積み重なる課題をどのように克服していくのか、注目が集まっている。』
夕飯を作る気になれなかった私は、コンビニでお弁当を購入し、自宅でそれを食べながらスマホを触っていたのだけど、食事を忘れその記事を食い入るように読んだ。
そして、記事の内容で、今、遼さんが窮地に立たされていることを知った。
これまでの経営責任を取って、遼さんが社長に就任するとなれば、今後は否応なしに彼を支える配偶者のことが話題に上がる。
この前の話は保留になったままだ。
いったいどうなるのだろう……
遼さんに連絡を取ろうか迷ったけれど、今、私の気持ちを伝えたら、きっと彼の重荷になる。
彼のことを試すようなことを言った手前、私からはどうにも身動きが取れなくて、彼からの連絡を待つしかなかった。
そして遼さんからホテルの部屋に戻ってきたと連絡があったのは、それから一週間を過ぎた頃のことだった。
その日、私は公休日で部屋の掃除を終えて、ひと息つこうとお湯を沸かしていた。
頂き物のフレーバーコーヒーを飲むため、マグカップにお湯を注ぎ、それを持ってダイニングテーブルへ移動する。
テーブルの上に置いていたスマホの画面が明るくなり、何かのメッセージを受信したことに気付いたけれど、それがまさか遼さんからとは思ってもみなかった。
コーヒーを飲んで、ふうっとひと息吐いた時、何気なくスマホを手に取ってロック画面を解除した。
ほかにもメールの通知などがあり、遼さんのアイコンが埋もれていて気付くのが遅れたため、遼さんのトーク画面にメッセージの通知を見つけた時は思わず手が震えてスマホを落としそうになった。
現在の時刻は11時15分。
メッセージを受信したのは11時5分、ちょうど10分前だ。
私はメッセージ画面を開きメッセージを読む。
『ようやくホテルに戻りました。これからしばらくの間ホテルに滞在します』
絵文字や顔文字、スタンプなど押されていない、至ってシンプルな文章だ。
私は深呼吸を一つして、メッセージを打ち込み、送信した。
『お疲れさまです。今日は公休日なので、昼食を作りに行きましょうか?』