隣にいる理由〜選ばれるはずのなかった私が、あなたの妻になるまで〜
 最近、遼さんは寝る間も惜しんで仕事をしていることは何となく察していた。けれどこうして病院に運ばれるまでになったのは、それを止めることができなかった私の責任だ。
 恋人契約を結んだときから健康面の管理を言われていたのに、それを守ることができないなんて、妻失格だ。

「そんなことを言い合っても解決にならないだろう。とにかく心配をかけてすまなかった。今日はこの点滴が終わったら、もう自宅に帰るよ」

「今日は家でも仕事しないで、ゆっくり休んでください」

 私の声に、遼さんは素直にうなずいた。

 その後、点滴が終わったのは2時間ほど経過した頃のことだった。
 その間に病室へ遼さんを診察してくれた先生がやってきて、病状とその後の過ごし方について指導を受けた。
 とにかくストレスが身体によくないので、ストレスを溜めないよう安静に過ごすことを指示されたけれど、それは今の彼には無理な話だ。
 佐藤さんから話を聞いていたけれど、遼さん本人の口からは何も聞かされていない。だから、彼が何か言うまで私は黙って様子を見ることにした。

 点滴が終わり、遼さんはベッドから起き上がる。
 遼さんが点滴を受けている間、私は先に会計を済ませ、処方された薬も受け取ったので、後はもう自宅へ帰るだけだ。
 
 エレベーターの無重力が目眩を誘発しないか心配だったけれど、何とか無事に部屋へ辿り着くと、遼さんは服を着替え、そのまま寝室で泥のように眠った。

 私たちは新婚とはいえ、未だ寝室も別だ。
 こんな時は寝室を分けていると心配になるけれど、私が発する生活音に動じることなく、ぐっすり眠れるなら逆に安心だ。

 こんな時くらい、仕事のことを忘れてぐっすりと眠れますように……

 翌日は、いつも通りに遼さんも起きている。
 もう一日くらい仕事を休んでもいいのではないかと言っても聞くような人ではないので、目眩止めの薬をきちんと服用することを約束してもらった。

 私も彼を送り出してから、仕事に向かう。

 結局昨日は遼さんから何も話を聞くことができなかった。
 けれど、彼がしゃべりたくなった時にきちんと聞ければいい。
 無理に聞き出すと、かえって逆効果で余計に体調が悪化してもいけない。ここは我慢だ。
 自分にそう言い聞かせ、仕事に打ち込んだ。

 そして仕事が終わり、マンションに戻ると、部屋に異変を感じた。
 珍しく遼さんが先に戻っている。でも彼からは、いつも以上に疲労と焦りのような匂いを感じた。

「遼、さん……?」
 
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