隣にいる理由〜選ばれるはずのなかった私が、あなたの妻になるまで〜
「それは頼もしい。だけどそれじゃ俺の格好がつかないから、そうならないよう頑張ってくるよ」
そう言って、遼さんは家を後にした。
私は心配を顔に出さないよう、笑顔で彼を見送った。
その日の午後、知らない番号から私のスマホに着信があった。
今日は私が仕事が休みで家のことをしていたので、着信に気づいたのは電話があってから30分後のことだった。
文字起こしの留守番電話のメッセージで、電話の相手が神宮寺浩子さんだとわかり、私は折り返しの電話を掛けた。
電話の呼び出し音がやけに大きく響いて聞こえる。
呼び出し音が2回鳴ったところで、神宮寺さんが通話に出た。
『はい、神宮寺です』
どうやって私の番号を知ったか疑問だったけれど、以前興信所を使って私のことを調べさせたと言っていたので、そこで番号も知ったのだろうと思うことにした。
「神田です。先ほどお電話をいただいていたのですが……」
『ああ、薫さんですね。時間をおいてこちらからまたお電話しようと思っていたんですけど、折り返していただいてありがとうございます』
「いえ。……それで、ご用件は何でしょう?」
私はスマホをスピーカーにしてテーブルの上に置くと、ダイニングチェアに腰を下ろす。
緊張で手汗をかいて、スマホを床に落とさないようにするためだ。
『ふふ、そんな緊張なさらないで。今日、神田食品の重役会議が行われたのは薫さんもご存じでしょう? その内容と結論を先にお知らせしようと思って』
神宮寺さんの言葉に、私はさらに緊張した。
重役会議に、もしかして神宮寺さんも出席されていたのだろうか――?
私の疑問が彼女にも伝わったようだ。
『詳しくは遼さんがあなたに直接お話しされると思いますから、結論だけ。遼さんは役員たちの前ではっきり言い切りました。「改革事業は自分の責任で推し進める。成功も失敗も引き受ける。そして、妻は私の人生で唯一、自分で選んだ存在だ」って。――ここまでハッキリ言われたら、私はもう出る幕はない。神宮寺百貨店は、これからも神田食品さんとお取引を継続させていただくことになったわ』
神宮寺百貨店が、これからも神田食品と取引を継続する。
その言葉を聞いて、私はスマホの向こうにいる神宮寺さんに向かって、深々と頭を下げながら「ありがとうございます」と伝えた。
通話が終わり、私は急いで夕飯の食材を買うためにスーパーへ向かう。
遼さんはいつも私が作る手料理をひとつ残さず綺麗に食べてくれるけれど、その中で彼の味覚に合ったものを見つけた。
それは、先日作った親子丼だ。
今日は親子丼にしよう。
買い物を終え、私は丁寧に下拵えをする。
もうすぐ彼が帰ってくる。
今日の重役会議の内容を話してくれるかはわからない。
けれど、彼が私に心を開いてくれているなら、きっと大切な話をしてくれる。
私はキッチンで料理をしながら彼の帰りを待っていた。
そう言って、遼さんは家を後にした。
私は心配を顔に出さないよう、笑顔で彼を見送った。
その日の午後、知らない番号から私のスマホに着信があった。
今日は私が仕事が休みで家のことをしていたので、着信に気づいたのは電話があってから30分後のことだった。
文字起こしの留守番電話のメッセージで、電話の相手が神宮寺浩子さんだとわかり、私は折り返しの電話を掛けた。
電話の呼び出し音がやけに大きく響いて聞こえる。
呼び出し音が2回鳴ったところで、神宮寺さんが通話に出た。
『はい、神宮寺です』
どうやって私の番号を知ったか疑問だったけれど、以前興信所を使って私のことを調べさせたと言っていたので、そこで番号も知ったのだろうと思うことにした。
「神田です。先ほどお電話をいただいていたのですが……」
『ああ、薫さんですね。時間をおいてこちらからまたお電話しようと思っていたんですけど、折り返していただいてありがとうございます』
「いえ。……それで、ご用件は何でしょう?」
私はスマホをスピーカーにしてテーブルの上に置くと、ダイニングチェアに腰を下ろす。
緊張で手汗をかいて、スマホを床に落とさないようにするためだ。
『ふふ、そんな緊張なさらないで。今日、神田食品の重役会議が行われたのは薫さんもご存じでしょう? その内容と結論を先にお知らせしようと思って』
神宮寺さんの言葉に、私はさらに緊張した。
重役会議に、もしかして神宮寺さんも出席されていたのだろうか――?
私の疑問が彼女にも伝わったようだ。
『詳しくは遼さんがあなたに直接お話しされると思いますから、結論だけ。遼さんは役員たちの前ではっきり言い切りました。「改革事業は自分の責任で推し進める。成功も失敗も引き受ける。そして、妻は私の人生で唯一、自分で選んだ存在だ」って。――ここまでハッキリ言われたら、私はもう出る幕はない。神宮寺百貨店は、これからも神田食品さんとお取引を継続させていただくことになったわ』
神宮寺百貨店が、これからも神田食品と取引を継続する。
その言葉を聞いて、私はスマホの向こうにいる神宮寺さんに向かって、深々と頭を下げながら「ありがとうございます」と伝えた。
通話が終わり、私は急いで夕飯の食材を買うためにスーパーへ向かう。
遼さんはいつも私が作る手料理をひとつ残さず綺麗に食べてくれるけれど、その中で彼の味覚に合ったものを見つけた。
それは、先日作った親子丼だ。
今日は親子丼にしよう。
買い物を終え、私は丁寧に下拵えをする。
もうすぐ彼が帰ってくる。
今日の重役会議の内容を話してくれるかはわからない。
けれど、彼が私に心を開いてくれているなら、きっと大切な話をしてくれる。
私はキッチンで料理をしながら彼の帰りを待っていた。