恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで【完】
「……もしもし」

『来海? 今、どこにいる』

 充輝の声を聞いただけで涙が出そうになる来海。

「飲み会は終わって……ちょっと気分が悪かったから、今は……公園で、少し休んでて」
『大丈夫?』

 充輝が心配そうに尋ねると、隣にいた大輔がわざとらしく声を出した。

「向坂さん、もしかして、羽柴さんからですか?」

 それは電話口にもはっきり届く問い掛けで、聞こえた瞬間充輝の中に嫉妬心が生まれていく。

『……もしかして、真白さんといるの?』
「……放っておけないって言われて……」
『公園って、どこ?』
「駅近くの……中央公園」
『すぐに行くから』

 それだけ言って通話は切れ、来海は呆然とスマートフォンを見つめていく。

 電話を切った充輝はハンドルを握る手に力を込め、

(真白さん、また来海に近付いて……)

 アクセルを踏み込み、急いで二人の元へ向かって行く。

 それから暫くして、近くのパーキングに車を停めた充輝が勢いよく公園まで駆けて来た。

 無言のまま真っ直ぐ向かって歩いてくるその姿に来海の心臓が高鳴る。

「充輝……」

 充輝の元へ向かおうとした来海を遮るように大輔がすっと立ち上がると、来海よりも一歩前へ出た。

「お疲れ様です、羽柴さん」
「お疲れ様です。来海の具合が悪いのを心配して、付いていてくれたんですね? ありがとうございました」
「いえ」
「後は俺が責任持って送り届けるので、真白さんはお帰りください」

 表情こそ穏やかそうではあるものの、空気から互いに牽制し合っているのがよく分かる。

「その前に、一つ聞いてもいいですか?」

 おもむろにスマートフォンを取り出した大輔は画面を充輝に向けられる。

「これ、本当なんですか?」

 表示されているのは、例のネットニュースの記事で、ネットニュースに載っていることを知らなかった充輝の瞳が鋭く細められた。
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