恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
 互いの想いを確かめ合うように抱き締め合ったまま、二人は暫く動かない。

 離れたくない――その気持ちは、言葉にしなくても痛い程に伝わってきて、

「……こうしてると、離れるのが嫌になる」
「私も……」

 鼓動が聞こえる程近い距離に居る、それだけで胸がいっぱいになる。

 やがて充輝はゆっくりと来海の頬に触れて、優しく顔を上げさせた。

「来海」

 視線がぶつかり合い、来海の方からそっと距離を縮めると、どちらからともなく唇を求めていき、重なり合うと深く確かめるようなキスをした。

「……来海」
「みつ、き……ッ」

 互いの温もりを感じ合いながら、二人はそのままベッドへと身を預けていく。

 二人の想いは同じで、このまま時間が止まればいいのにと思っていた。

 充輝は来海を抱き寄せると、彼女の髪を優しく撫でる。

「今日はこのまま寝よう」
「……うん」

 来海は充輝に抱かれ、彼の胸に頬をつけて鼓動を感じると安心したように目を閉じた。

 離れ離れになる日が近いからこそ今この温もりを忘れないように、充輝の腕の中で来海は静かに眠りにつくのだった。

 翌朝――。

 柔らかな朝の光がカーテンの隙間から差し込むと、その眩しさに目を覚ました充輝は腕の中で眠る来海を見下ろしながら小さく微笑んだ。

「……ん……」

 すると、ゆっくり目を開けた来海は彼の顔を見ると少し照れたように笑った。

「おはよう、充輝」
「おはよう、来海」

 起きて一番に顔を見ながら言葉を交わせる、そんな些細なことすらも今の二人には幸せだった。
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