恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
「離れるの……辛い……っ」

 その言葉を聞いた充輝はゆっくりと来海の隣に座り直し、そっと肩を抱き寄せた。

「来海……」

 すると、来海は充輝の服を掴みながら、

「……お願い」

 小さく震える声で縋るように言った。

「朝まで……傍に居て……お願い……っ」

 充輝だって、居られるならばギリギリまで傍に居たいと思っていた。

 けれど、これ以上一緒に居れば離れる決心が鈍ると分かっていたから帰ろうとした。

 だけど――腕の中で震える来海を残して帰ることは出来なかった。

「……分かった……朝まで、居るから」

 その言葉に、来海の肩が小さく震えた。

「……ありがとう」

 掠れた声で礼を言う来海の頬に充輝はそっと手を伸ばして指先で涙を拭うと静かに顔を寄せた。

 すると、徐々に距離が縮まり、どちらからともなく唇を重ねていく。

 最初は触れるだけの優しいキスだったけれど離れた瞬間、互いにまた求めてしまう。

 来海の指が充輝のシャツを強く掴むと、それに応えるように充輝の腕が来海の背中を引き寄せた。

 離れたくない――その想いが、言葉よりも先に溢れていた。

 何度も口づけを重ねながら互いの温もりを確かめ合う。

 そこに、言葉はいらなかった。

 離れることが分かっているからこそ、今この瞬間の触れ合いが何よりも大切だった。
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