恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
 充輝は来海の背中に回していた腕に力を込めた。

 離れたくないという想いが、痛い程に伝わってくる。

「……来海」

 充輝が低く名前を呼ぶと来海は潤んだ瞳のまま見上げた。

 その表情を見た瞬間、充輝はもう何も考えられなくなり、ゆっくりと来海の身体を抱き上げた。

「……っ」

 突然浮き上がった身体に来海が小さく息を呑む。

「ベッド、行こう」

 そう言って歩き出す充輝の胸元に来海はぎゅっと顔を埋めた。

 そして、ベッドに辿り着くと充輝はそのまま優しく来海を下ろす。

 柔らかなシーツの上に沈み込んだ来海の隣に充輝もゆっくりと身体を横たえた。

 互いの顔がすぐ目の前にある距離。

「……来海」

 名前を呼びながらそっと頬に触れると来海は小さく頷き、その仕草に導かれるように充輝は再び唇を重ねた。

 先程よりも深く長い口づけを、何度も角度を変えながら求め合う。

 来海の指が充輝のシャツを掴み震えながら引き寄せる。

「……離れたく、ない……」

 充輝は一瞬目を閉じると来海を強く抱き寄せる。

「俺だって……離れたくない」

 低く呟いたあと、ゆっくりと来海の服に手をかけ、一枚ずつ脱がしていくたびに来海の肩が小さく震える。

 けれど拒むことはなく、ただ充輝を見つめていた。

 やがて露わになった白い肌に充輝はそっと唇を落とす。

「……っ」

 首筋に触れる温もりに来海の息が甘く漏れるも、充輝はそのまま何度も口づけていく。

 鎖骨、肩、そして胸元へ。

 離れていても、自分の痕跡が消えないように、身体の至るところに何度も何度も。

「離れてる間に……忘れないように」

 充輝の口からポツリと漏れ出たその言葉に、来海の目が潤んだ。

「忘れるわけ、ないよ……」

 震える声でそう答えながら、来海は充輝の背中に腕を回し、二人は自然に身体を寄せ合った。

 胸と胸が触れ合い互いの鼓動が伝わってくる。

 充輝は来海の髪に顔を埋めるようにして囁いた。

「……来海」
「うん……」
「朝まで、ずっと一緒だから――」

 その言葉のあとに再び唇が重なっていく。

 互いの温もりを確かめるように抱き締め合いながら、二人は何度も身体を重ねていった。

 離れている間、この温もりや痕跡が消えてしまわぬように。

 少しでも長く刻みつけられるように。

 二人の熱は夜が更ける程に深まっていくのだった。
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