恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
部屋を出た充輝は待たせていたタクシーの中で、一本の電話をかけていた。
数回のコールの後、電話に出たのは真帆だった。
『……はい』
「突然すみません、お話があります」
『…………良いご報告……ではないようですね?』
「はい。先程、会社を辞めました。その上で、改めて言わせてください。貴方との縁談は受けられません。すみません……」
充輝がはっきり意思を伝えると、少しの沈黙の後に真帆は静かに言った。
『……そうですか。それでは、父にはありのままをお話しします』
「……すみません。ありがとうございます」
『それと、今の貴方には関係の無いことかもしれませんが、御社との今後の付き合い方についても――改めて考えさせていただきますので、そのおつもりで』
それだけ言うと、
『失礼します』
通話はあっさりと切れてしまう。
「…………」
充輝は暫くスマートフォンを見つめていた。
自分の行動によって会社や社員たちに迷惑が掛かるのは事実で、それは申し訳ないという思いはある。
それでも、
(こうするしか、無かったんだ……)
そう割り切ると、スマートフォンの電源を切った。
それから暫くして、充輝の父親が会社へ到着した直後のことだった。
是枝が慌てた様子で社長室へ入って来る。
「社長、お電話が……NRGグローバルホールディングスの楡木様からです」
「…………」
嫌な予感が頭を過ぎったのか無言で受話器を取ると、向こうからは苛立ちを隠さない声が聞こえてきた。
『一体どういうおつもりですか』
「……何のことでしょう」
『とぼけないでいただきたい。先程、そちらのご子息から娘に直接連絡がありましたよ。縁談は受けられないと。しかも――会社を辞めた、と』
「……何ですって?」
聞いた瞬間、父親の表情が一瞬で凍りつく。
『娘を通して断りの連絡が来るとは思いませんでしたよ。こちらとしても面目丸潰れです。御社との今後の関係については改めて検討させていただきます』
「……それは、」
相手が怒るのも無理は無い。
何とか弁明しようとするも、
『失礼します』
通話は一方的に切られてしまい、静まり返った室内に受話器を置く音だけが響いた。
「……あの馬鹿が……!」
そして、怒りで顔を歪めながらすぐにスマートフォンを取り出して充輝の番号へ発信する。
がしかし、
『……おかけになった電話は電源が入っていないか――』
充輝はこれを見越して既に電源を落としていた為繋がることは無かった。
数回のコールの後、電話に出たのは真帆だった。
『……はい』
「突然すみません、お話があります」
『…………良いご報告……ではないようですね?』
「はい。先程、会社を辞めました。その上で、改めて言わせてください。貴方との縁談は受けられません。すみません……」
充輝がはっきり意思を伝えると、少しの沈黙の後に真帆は静かに言った。
『……そうですか。それでは、父にはありのままをお話しします』
「……すみません。ありがとうございます」
『それと、今の貴方には関係の無いことかもしれませんが、御社との今後の付き合い方についても――改めて考えさせていただきますので、そのおつもりで』
それだけ言うと、
『失礼します』
通話はあっさりと切れてしまう。
「…………」
充輝は暫くスマートフォンを見つめていた。
自分の行動によって会社や社員たちに迷惑が掛かるのは事実で、それは申し訳ないという思いはある。
それでも、
(こうするしか、無かったんだ……)
そう割り切ると、スマートフォンの電源を切った。
それから暫くして、充輝の父親が会社へ到着した直後のことだった。
是枝が慌てた様子で社長室へ入って来る。
「社長、お電話が……NRGグローバルホールディングスの楡木様からです」
「…………」
嫌な予感が頭を過ぎったのか無言で受話器を取ると、向こうからは苛立ちを隠さない声が聞こえてきた。
『一体どういうおつもりですか』
「……何のことでしょう」
『とぼけないでいただきたい。先程、そちらのご子息から娘に直接連絡がありましたよ。縁談は受けられないと。しかも――会社を辞めた、と』
「……何ですって?」
聞いた瞬間、父親の表情が一瞬で凍りつく。
『娘を通して断りの連絡が来るとは思いませんでしたよ。こちらとしても面目丸潰れです。御社との今後の関係については改めて検討させていただきます』
「……それは、」
相手が怒るのも無理は無い。
何とか弁明しようとするも、
『失礼します』
通話は一方的に切られてしまい、静まり返った室内に受話器を置く音だけが響いた。
「……あの馬鹿が……!」
そして、怒りで顔を歪めながらすぐにスマートフォンを取り出して充輝の番号へ発信する。
がしかし、
『……おかけになった電話は電源が入っていないか――』
充輝はこれを見越して既に電源を落としていた為繋がることは無かった。