恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで【完】
「失礼致します。お呼びでしょうか」

 社長は椅子にもたれたまま値踏みするように大輔を見据えた。

「ああ。前に私が頼んだ件だが、上手くいかなかったようだな」
「申し訳ございません」
「まあ良い。そのことも踏まえて、真白くんにチャンスを与えようと思う」

 短く答えた後、社長は身を乗り出す。

「単刀直入に言う。どんな手段を使ってもいい、女から充輝の居場所を聞き出せ」

 その言葉に大輔は表情一つ変えることなく、「承知しました」と即答するも、

「ですが――確実に成功させる為にも、時間をいただきたいのですが」

 時間が欲しいと願い出る。

 その言葉に社長の眉がぴくりと動く。

「時間だと?」
「はい。無理に迫れば警戒されるだけですから、確実に聞き出すには段取りが必要です」
「悠長なことを言っている場合か。君も聞いているだろう? NRGとの契約が白紙になるかもしれない噂は。そうならない為にも、こちらは一刻も早く連れ戻したいんだ」
「承知しております。ですからその為にも確実性を優先すべきかと」

 社長は腕を組み深く考え込み、やがて小さく舌打ちをした。

「……いいだろう……但し、一週間だ。それ以上は待たん。必ず、一週間以内に居場所を聞き出せ」
「ありがとうございます」

 要求が通りホッと胸を撫で下ろす大輔に社長は冷酷な条件を重ねた。

「それと同時に、今度こそ充輝との交際も諦めさせろ」
「…………」
「二度と関わらないと、本人の口から約束させるんだ」

 有無を言わせぬ命令に大輔は一瞬だけ沈黙し、

「……承知しました」

 静かに頷いた。

 話を終えた大輔は一礼して社長室を後にし廊下に出た瞬間から、どう動くか思考を巡らせる。

 強引に聞き出すのは簡単だが、それでは失敗するのは目に見えている。

 けれど、充輝の居ない今こそが来海に近付くチャンスとも言える。

(とにかく時間が無い。急いで接触しないとな)

 まずは充輝とどう連絡を取るのかを探る為、仕事終わりに来海と接触を図る機会を作ることにした。
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