恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
「実は昨日の夜、是枝さんから電話が掛かって来たんだ」

 充輝は静かにそう切り出した。

「是枝さんから?」
「ああ……最初は俺も疑った。居場所がバレたのかと思ったし……でも、違った」

 その時のことを思い返すように充輝はわずかに視線を落とすと、短く息を吐いてからゆっくりと言葉を続けていく。

「親父が俺の居場所を探すためなら手段を選ばないつもりらしくてさ……真白を使って来海に俺の居場所を吐かせるつもりだって聞いた」
「え……」

 充輝の言葉に来海の顔が強張る。

「それを聞いた瞬間、すぐ戻ろうとした。でも最終便はもう出た後でさ……だから朝一の便で戻って来た」
「そうだったの……」
「それで、こっちに着いてからは来海の仕事が終わるまで時間潰して連絡しようと思ってたんだけど是枝さんから連絡が来て、直接会って話してた」

 来海は少し迷うように視線を揺らし、それからおずおずと口を開いた。

「……その、是枝さんは……社長の味方、じゃないの?」

 不安げな問いに充輝ははっきりと首を横に振る。

「確かに、あの人は社長補佐で親父の右腕だ。今までは言いなりに見えてたかもしれない。でも……そうじゃなかった」
「……どういうこと?」

 来海の問いに充輝は少しだけ間を置き、一呼吸吐いて再び話始めた。
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