恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
「……是枝さんは親父と真白がやってることの“証拠”を押さえたかったんだ」
「証拠……」

 来海が小さく繰り返す。

「音声の録音は取れてたらしい。でも、それだけじゃ弱いだろうから出来れば映像も欲しいと思っていたみたい」

 充輝は当時の説明を思い返すように少しだけ視線を落とす。

「社長室でのやり取りは映像まで押さえてたけど、親父に指示された真白が実際に動いて来海に接触して何かをする……その決定的な場面も残したかったらしい」
「……それで……」
「ああ」

 充輝は頷いた。

「ただ張っているだけじゃいつ行動を起こすか分からない。そこで考えたのが、身体に影響のない程度の薬を用意して、それを真白に使わせることだったって」
「…………」
「ただ、勿論その行為が犯罪だってことは是枝さんも分かってた……。彼は自分も裁かれる覚悟で……真白に提案したらしい」

 来海は言葉を失った。

「……最初は、真白も拒んだみたいだ……流石にそこまでは出来ないって。でも……」

 充輝はわずかに眉を寄せた。

「社長が期待してる、裏切るなって是枝さんが念押したらしい。それで悩んだ末に、結局真白は自分の今後を優先して、来海に薬を盛った」
「…………っ」
「そして是枝さんは知り合いの探偵を雇って真白の動きをずっと張らせて、実際に来海に接触して薬を使う瞬間も……映像で押さえた……それが、俺が聞かされた内容だよ」
「……そう、なんだね……」

 話を聞いた来海は何を言えばいいのか分からずに黙り込んでしまい、話し終えた充輝は例えどのような理由があろうとも来海を危険な目に遭わせてしまったことを悔いていた。
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