恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
「……今、何と言った?」
低く唸るような声が室内に落ちた。
父親の視線は是枝を鋭く射抜いている。
「舐めた口を利くな」
怒気を孕んだその一言に空気が一気に張り詰めたが、それでも是枝は一歩も引かず、真っ直ぐに父親を見据えて言葉を続けていく。
「……社長、いい加減にしてください。貴方はいつも利益優先と仰っていますが……大切なのは、それだけではないんです」
確かな強さを持った声で。
「これまでは社長の意向に沿って口出しはしませんでした。私に出来ることは可能な限り陰ながらお手伝いさせていただきました。それで円滑に事が運ぶのならばと……そう思ってやって来ました…………ですが、今回ばかりは……見て見ぬふりは出来ません」
その言葉に充輝は思わず息を呑む。
「社長は充輝様のお気持ちを考えたことがおありですか? 充輝様は会社を繁栄させる為の道具ではありません。駒橋様が仰る通り、一人の人間です。そんな充輝様の思いを一切聞かずに話を進めてしまうのは……横暴過ぎます」
声がわずかに震えるも、言葉は止まらなかった。
「社長……貴方は、誰よりも人のことを思いやれるお優しい方だったじゃないですか。私は貴方に救われました……他にも、救われた社員は沢山おります」
是枝の瞳に強い想いが滲む。
「お願いです……昔の、優しく他人を思いやれる社長に……戻ってください……」
静まり返る室内。
是枝の訴えは、この場にいる全員の胸に響いていた。
充輝は思わず拳を握り締め、裕太もまた、何も言わずに目を伏せていた。
是枝の想いがどれほどの覚悟の上でのものかが痛い程に伝わってくる。
けれど、
「…………」
父親は何も言わなかった。
少しの間、重く息苦しい時間が流れた、その時、
「……それは、過去のことだ」
ぽつりと吐き捨てるように父親が言った。
その言葉に是枝の表情が固まる。
「今の私のやり方に納得がいかぬなら……お前も辞めればいい」
父親の言葉は、あまりにも酷い一言だった。
その瞬間、
「……ふざけるなよ」
低く押し殺した充輝の声が響いた。
「今の話聞いて……それが出てくるのかよ。自分の為じゃなくて、あんたの為に……会社の為に動いてくれてた人に対して、言うことがそれか? 昔のあんたに救われたって言ってんだぞ」
怒りが沸き上がり、拳が強く握られる。
「それを……“過去のこと”で片付けて……気に入らないなら辞めろって? どこまで腐ってんだよ……!」
怒りを通り越して呆れすら感じた充輝は鋭い視線を向けながら父親に怒鳴り声を上げた。
低く唸るような声が室内に落ちた。
父親の視線は是枝を鋭く射抜いている。
「舐めた口を利くな」
怒気を孕んだその一言に空気が一気に張り詰めたが、それでも是枝は一歩も引かず、真っ直ぐに父親を見据えて言葉を続けていく。
「……社長、いい加減にしてください。貴方はいつも利益優先と仰っていますが……大切なのは、それだけではないんです」
確かな強さを持った声で。
「これまでは社長の意向に沿って口出しはしませんでした。私に出来ることは可能な限り陰ながらお手伝いさせていただきました。それで円滑に事が運ぶのならばと……そう思ってやって来ました…………ですが、今回ばかりは……見て見ぬふりは出来ません」
その言葉に充輝は思わず息を呑む。
「社長は充輝様のお気持ちを考えたことがおありですか? 充輝様は会社を繁栄させる為の道具ではありません。駒橋様が仰る通り、一人の人間です。そんな充輝様の思いを一切聞かずに話を進めてしまうのは……横暴過ぎます」
声がわずかに震えるも、言葉は止まらなかった。
「社長……貴方は、誰よりも人のことを思いやれるお優しい方だったじゃないですか。私は貴方に救われました……他にも、救われた社員は沢山おります」
是枝の瞳に強い想いが滲む。
「お願いです……昔の、優しく他人を思いやれる社長に……戻ってください……」
静まり返る室内。
是枝の訴えは、この場にいる全員の胸に響いていた。
充輝は思わず拳を握り締め、裕太もまた、何も言わずに目を伏せていた。
是枝の想いがどれほどの覚悟の上でのものかが痛い程に伝わってくる。
けれど、
「…………」
父親は何も言わなかった。
少しの間、重く息苦しい時間が流れた、その時、
「……それは、過去のことだ」
ぽつりと吐き捨てるように父親が言った。
その言葉に是枝の表情が固まる。
「今の私のやり方に納得がいかぬなら……お前も辞めればいい」
父親の言葉は、あまりにも酷い一言だった。
その瞬間、
「……ふざけるなよ」
低く押し殺した充輝の声が響いた。
「今の話聞いて……それが出てくるのかよ。自分の為じゃなくて、あんたの為に……会社の為に動いてくれてた人に対して、言うことがそれか? 昔のあんたに救われたって言ってんだぞ」
怒りが沸き上がり、拳が強く握られる。
「それを……“過去のこと”で片付けて……気に入らないなら辞めろって? どこまで腐ってんだよ……!」
怒りを通り越して呆れすら感じた充輝は鋭い視線を向けながら父親に怒鳴り声を上げた。