恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
張り詰めた空気の中、充輝はふっと息を吐くと、隣に座る裕太と目配せをする。
言葉はなくとも、その意図は十分に伝わったようで、裕太が小さく頷き、二人は同時に立ち上がった。
「……これ以上話しても無駄だろうから、俺らは行くよ…………警察に行くのは、明日まで待つ。別に情けをかける訳じゃないけど、今の話を聞いて親父の気が変わるなら……まだ話し合えることもあるかもしれない。けど、変わらないなら、もう何も言うことは無い」
父親を真っ直ぐ見据えたまま言葉を続けた後、是枝の方へ視線を移した充輝。
「是枝さん、ありがとうございました」
その一言に是枝はわずかに目を見開いた。
「それじゃあ、失礼します」
そして、充輝が短くそう告げると、裕太と二人で部屋を出て行った。
残された父親と是枝の間には依然として重苦しい沈黙が流れていく。
「……社長」
やがて是枝が口を開いた。
「本当にこれで宜しいのですか? 充輝様は本気です。それでもまだ、ご自分の意志を押し通すおつもりですか?」
「…………」
「謝罪をして、充輝様の意志を尊重なさることこそが、会社の為にも良い結果をもたらすかと思います…………NRGと手を組むことだけが全てではありません。他にも企業は沢山あります。皆が幸せになれるよう、今一度考えてください、どうかお願いします」
何も答えない父親を前に深く頭を下げる是枝。
しかし、その沈黙はこれまでとは違っていた。
怒鳴りつけることも威圧することもない、ただ何かを考え込むように、じっと動かずにいる。
その姿からは、これまでの傲慢さは見えない。
(言葉は、届いているのかもしれない)
是枝はそう感じながら顔を上げ、例え社長がどのような決断を出しても見捨てることは無いと改めて心に誓っていた。
一方、店の外へ出た充輝と裕太は足を止めることなく歩き続けていた。
「……いやぁ、正直びっくりしたな」
裕太がぽつりと呟く。
「お前の親父さん、あそこまで利益優先とはな……」
「……昔からそういう節はあったけど、ここ数年は特にですよ」
充輝は溜め息混じりに苦々しく返す。
「まあ、経営者として利益を考えることは勿論だけどさ、それだけじゃないよな、大切なのは」
「…………」
「それに、是枝さんっていう優秀な人が傍にいるんだ、周りを信じて道を間違えずに進んで行けば、大手企業に頼らなくても十分成長していけると思うけどな……」
軽く肩を竦めながらも、その言葉には確信があった。
「……そうですね。少しでも俺たちの言葉が響いていれば、良いんですけどね……」
その時、
「充輝!」
聞き慣れた声が後ろから飛んできて、充輝が振り向くと、息を切らしながら駆け寄ってくる来海の姿があった。
言葉はなくとも、その意図は十分に伝わったようで、裕太が小さく頷き、二人は同時に立ち上がった。
「……これ以上話しても無駄だろうから、俺らは行くよ…………警察に行くのは、明日まで待つ。別に情けをかける訳じゃないけど、今の話を聞いて親父の気が変わるなら……まだ話し合えることもあるかもしれない。けど、変わらないなら、もう何も言うことは無い」
父親を真っ直ぐ見据えたまま言葉を続けた後、是枝の方へ視線を移した充輝。
「是枝さん、ありがとうございました」
その一言に是枝はわずかに目を見開いた。
「それじゃあ、失礼します」
そして、充輝が短くそう告げると、裕太と二人で部屋を出て行った。
残された父親と是枝の間には依然として重苦しい沈黙が流れていく。
「……社長」
やがて是枝が口を開いた。
「本当にこれで宜しいのですか? 充輝様は本気です。それでもまだ、ご自分の意志を押し通すおつもりですか?」
「…………」
「謝罪をして、充輝様の意志を尊重なさることこそが、会社の為にも良い結果をもたらすかと思います…………NRGと手を組むことだけが全てではありません。他にも企業は沢山あります。皆が幸せになれるよう、今一度考えてください、どうかお願いします」
何も答えない父親を前に深く頭を下げる是枝。
しかし、その沈黙はこれまでとは違っていた。
怒鳴りつけることも威圧することもない、ただ何かを考え込むように、じっと動かずにいる。
その姿からは、これまでの傲慢さは見えない。
(言葉は、届いているのかもしれない)
是枝はそう感じながら顔を上げ、例え社長がどのような決断を出しても見捨てることは無いと改めて心に誓っていた。
一方、店の外へ出た充輝と裕太は足を止めることなく歩き続けていた。
「……いやぁ、正直びっくりしたな」
裕太がぽつりと呟く。
「お前の親父さん、あそこまで利益優先とはな……」
「……昔からそういう節はあったけど、ここ数年は特にですよ」
充輝は溜め息混じりに苦々しく返す。
「まあ、経営者として利益を考えることは勿論だけどさ、それだけじゃないよな、大切なのは」
「…………」
「それに、是枝さんっていう優秀な人が傍にいるんだ、周りを信じて道を間違えずに進んで行けば、大手企業に頼らなくても十分成長していけると思うけどな……」
軽く肩を竦めながらも、その言葉には確信があった。
「……そうですね。少しでも俺たちの言葉が響いていれば、良いんですけどね……」
その時、
「充輝!」
聞き慣れた声が後ろから飛んできて、充輝が振り向くと、息を切らしながら駆け寄ってくる来海の姿があった。