恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで【完】
 来海はその言葉を受け止めるように、そっと充輝の背に手を回した。

「……私もだよ」

 そう小さく呟く来海の身体を少しだけ離した充輝は彼女の顔を覗き込むと、そのまま唇に軽く口付けをする。

「俺、幸せ過ぎておかしくなりそう」
「ふふ、大袈裟だよ。でも、本当に幸せ。同棲するって良いね」

 来海が柔らかく微笑むと、嬉しそうな表情を浮かべた充輝が、「ちょっと待って」と呟いてベッド脇のチェストへ手を伸ばす。

引き出しを開けて取り出したのは小さな箱だった。

「……これ」

 そう言いながら来海へ差し出す。

「開けてみて」
「え……?」

 戸惑いながらも、ゆっくりその箱を受け取った来海が包みを解いて開けていくと、

「……っ」

 中に収められていたのは、繊細に輝く指輪だった。

 それは今薬指に嵌めているものよりも明らかに上質だと一目で分かる程に光り輝いていて、その輝きを目にした途端、来海の胸の奥がじんと熱くなって瞳には涙が滲んでいた。

「来海」

 名前を呼ばれて顔を上げた来海は充輝を真っ直ぐに見つめていく。

「改めて言わせて欲しい。これから先、何があっても来海を守る。どんな困難も支え合って生きていきたい。来海を誰よりも幸せにするから――」

 そう言いながらそっと来海の手を取り、

「――来海、俺と結婚してください」

 その言葉に来海の瞳から一筋の涙が零れていく。

「……はい」

 震える声だけど、それでもはっきり答えると、充輝はホッとしたように微笑みながら来海の指に嵌められていた指輪をそっと外して新たな指輪をその薬指へと通していった。

 そしてそのまま来海の身体を引き寄せて唇を重ねていく。

 初めは優しく確かめるような口付けだけど、それは少しずつ深くなり、来海の身体をそっとベッドへと導いた。

 柔らかなシーツの上に倒れ込む来海の上に覆い被さりながら、充輝は名前を呼ぶ。

「来海……」
「……みつ、き……ッ」

 再び重ねられた唇からは吐息が漏れるものの口付けは止まることなく、ただ激しさを増していった。
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