恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで【完】
「待って……」

 来海がそう小さく制止するも、

「待てない……今すぐ来海が欲しい」

 余裕の無さ気な表情で言われてしまうと来海はそれ以上何も言えなくなってしまう。

「来海、愛してる――」

 優しく耳元で囁きながら、充輝は再び来海に触れる。

「……っん、」
「誰もが羨むくらいの幸せな家庭を、来海と築きたい――」

 その言葉と共に充輝の指先と唇が再び来海の肌をなぞると、触れられるたびに来海の身体は反応していく。

「……みつ、き……っ」

 気持ち良いのか、抑えきれない声が来海の口から漏れていき、それを聞いた充輝は更に距離を詰めるように身体を寄せた。

 そのまま重ねられる口付けは深く、何度も何度も繰り返される。

 言葉を挟む隙も息付く間も無い程に奪われて、来海の思考は次第に蕩けていった。

「……っ、ん……、み、……つき……ッ」

 息の混じる声と共に見上げたその表情は潤んでいて、充輝の胸が強く締め付けられる。

(来海のこの表情を知ってるのは、俺だけ……)

 そう思った瞬間、理性の糸が更に緩んでいく。

「……その顔、反則だよ……」

 囁く声は甘いものの充輝の腕の力は強く、逃げ場を塞ぐように来海を抱き寄せる。

 キスは更に深く強くなり、充輝の中で溢れる愛の言葉は途切れることなく降り注いだ。

「来海のこんな可愛い姿を俺だけが知ってるとか、俺ってマジで幸せ過ぎ……」
「……や、……っ、そんな……」

 降り注ぐ言葉に照れる間もなく、唇を奪われ、耳元で囁かれ、身体の至るところを触れられるたびに来海は何も考えられなくなっていく。

「……ごめん、今日は優しく出来ないかも……」

 充輝の来海への愛は止まることなく、理性は既に消えかけるけれど、それは来海も同じでもっと強く、深く愛して欲しい、大好きで愛おしい充輝と深く繋がり合いたい気持ちが来海の身体と心を支配していた。

「……いい、よ…………やさしく、なくて……」

 そして、来海のその一言で充輝の中にあった僅かな理性すらも消えて無くなった。
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