恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
 コンビニを出て車へ乗り込むと、念の為充輝は少し遠回りをしながら来海の自宅アパートまで車を走らせた。

「……アイツ、完全にアウトだな」

 アパートの駐車場に車を止めると充輝が低く呟いた。

「待ち伏せして後をつけて、逃げ場のないところまで追い詰める。そんなの、完全にストーカーだよ」

 その言葉に来海は唇を噛みしめて視線を落とす。

「私が……いけないんです。再会した時に、もっと強く拒絶しなかったから……」
「違う」

 即座に返された声はこれまでになく強くて、来海は思わず肩を震わせる。

「向坂さんは何も悪くない。悪いのは、君の気持ちを無視してるアイツだ」
「……でも……」

 充輝は身体ごと来海の方へ向き直ると真剣な眼差しで見つめながら、

「何かあったら連絡すればいいって言ったけど……正直、今日のことを考えるとそれじゃマズいと思うから……向坂さん、俺に君を守らせて」

 自分に守らせて欲しい、頼って欲しいことを告げた。

「…………でも、」
「向坂さんのことが心配なんだ。俺は、本気だよ?」
「…………っ、」

 視線を逸らすことすら出来ない程に真剣な瞳に捉えられた来海はそれ以上何も言えなくなり、鼓動はドキドキと大きな音を立てて鳴り響いていた。

「……でも、もし万が一私のせいで、羽柴くんに危険が迫ったりしたら……」
「そんなこと言ってる場合じゃない」

 充輝の声がわずかに強くなる。

「俺は男だから例え危険が迫ってもどうにか出来る自信があるし、アイツと力の差では負けるつもりも無いけど、向坂さんは女の子なんだから、アイツが襲って来たら、力では敵わないでしょ?」
「……そう、かもしれないけど……」
「それに、このアパートだっていつ知られるか分からない。もしかしたらもう特定されてるかもしれない。何かあってからじゃ遅いんだ」

 普段は穏やかな充輝が声を荒らげるのは来海の身を案じているからこそ。

 その想いに気づいた来海はゆっくりと顔を上げると真っ直ぐに充輝を見つめた。

「……そう、だよね。ごめんなさい……」

 そして一度言葉を区切り来海は言葉を続けていく。

「今日、羽柴くんが来てくれた時……すごく安心したの。私のことで負担をかけるのは心苦しいし本当に申し訳ない気持ちもあるんだけど……でも、傍にいてもらえると、安心できるの……。だから、お願いします。私を……守って……」

 その言葉を聞いた瞬間、張りつめていた充輝の表情がほんの少しだけ緩む。

「うん、任せて。必ず守るよ。絶対、向坂さんを危険な目に遭わせたりしないから」

 こうして充輝は、泰斗から来海を守る為にいくつかの決まりごとを作ることにした。
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