恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
二人はリビングのソファーに並んで腰を下ろした。
「……巻き込んでしまって、本当にごめんなさい」
その声には、申し訳なさと自分を責める気持ちが滲んでいたけれど、充輝は静かに首を振って穏やかな笑みを浮かべた。
「守ることが出来て良かった。それだけだよ」
その言葉に来海の胸が小さく震えた。
命の危険が迫る中でも自分を最優先にしてくれたこと、そして今も変わらず傍にいようとしてくれること。
その一つ一つが心の奥へと温かく染み込んでいく。
(もっと……羽柴くんのことを、知りたい)
ふと芽生えた想いに来海自身が驚いていたけれど、それは確かに惹かれている証だった。
でも、これを「恋」と呼んでいいのかはまだ分からず、だからこそ今は正直な気持ちだけを言葉にする。
「……助けてくれて嬉しかったし、今もこうして傍に居てくれて、心強い……です。私、今までは元カレのこともあって異性を知ることも、近づくことも、怖かった。信じて裏切られるかもしれないと思ったら、どうしても信じきれなかった。だけど……私……羽柴くんのことなら、信じてもいいって、思えた……。自分勝手かもしれないけど、私は……あなたを、もっと知りたいと思ったの……。だから、これからは……羽柴くんのこと、もっと知りたい……です」
控えめながらも確かに向けられた想い。
充輝はその言葉に驚くと共に、ずっと一方通行だと思っていた想いが届き、来海が自分に興味を向け始めてくれたことが嬉しくなり、それだけで胸が満たされていく。
「そう思ってくれたの、すごく嬉しい。知りたいことがあれば何でも聞いて欲しいし、俺も向坂さんのこと、もっと知っていきたい」
「羽柴くん……」
「勿論、まだ俺たちは同僚っていう立ち位置なのは分かってる。けど、今はそれよりも少しだけ、親密になれたってことで……いいのかな?」
「うん……その、まだこれが恋愛とか、そういう感情なのかは断言出来ないから……お友達……として、仲良くしていけたらと思ってる」
「分かった」
こうして二人の距離はまた一つ、確実に一歩近づいていくのだった。