恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
 週末の仕事終わり、充輝はエマと共に彼女が選んだ店へと向かった。

 落ち着いた照明に包まれた半個室の店内。

 今日は初めから二人きりとあって、エマは終始嬉しそうな表情を向けていく。

お酒を飲みながら料理をつまみ、会話は弾んでエマの笑顔も増えていく一方で、充輝の表情は時間が経つにつれて少しずつ硬さを帯びていった。

 そんな充輝に気づいていないのか、暫くしてエマが身を乗り出す。

「ねえ、今日はまだ時間もあるし、この後……どこか行かない?」

 すると、それを聞いた充輝はエマのその質問には答えずにそっとグラスを置くと、真剣な眼差しでエマを見つめた。

その瞬間、場の空気が一変する。

「悪いけどーー」

 そして静かに切り出した充輝は言葉を選ぶことなく続けた。

「エマと、こうして二人きりで食事に行くのは、これで最後にする」
「……え?」

 エマは目を見開き言葉を失い、重たい沈黙のあと焦ったように声を上げた。

「え? どういうこと? 私、何かした?」
「違う。エマが何かしたからとか、そういうことじゃない」
「じゃあ、何でなの? 急にそんなこと言われても……意味が分からないよ」

 充輝は一度だけ息を吸うと覚悟を決めて口を開いた。

「――俺、向坂さんのことが好きなんだ。だから、これ以上彼女に誤解されるような行動は取りたくない」

 その瞬間、エマの表情が凍りついた。
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